メンズヘアセットはアイロンで激変する。基本の使い方とプロの技を全公開
ワックスやジェルをつけただけでは、なぜか思い通りのスタイルにならない。
そんな、いつものヘアセットに物足りなさを感じていませんか。
その「何か」を埋め、あなたのヘアスタイルを別次元へと進化させる魔法の道具、それが「ヘアアイロン」です。
今や、おしゃれな男性にとっては必須アイテムとも言えるヘアアイロン。
プロの理容師も多用するこの道具の正しい使い方をマスターすれば、自宅で、まるでサロン帰りのようなハイクオリティな仕上がりを手に入れることが可能です。
今回は、その基本の「き」から、プロが実践する応用テクニックまでを徹底的に解説します。
なぜヘアアイロンを使うのか?ワックスだけとの決定的な違い
ヘアアイロンを使う最大のメリットは、ワックスだけでは決して作れない、髪の「土台」そのものをデザインできる点にあります。
- 熱による、強力な形状記憶
ワックスが髪の「表面」をコーティングして整えるのに対し、ヘアアイロンは「熱」の力で髪の内部構造に直接働きかけ、カールやストレートといった形を記憶させます。
これにより、スタイルが湿気や時間で崩れにくく、一日中、美しいフォルムをキープすることができます。 - 自由自在な質感のコントロール
アイロンで熱を通した髪は、キューティクルが整い、美しい艶(ツヤ)が生まれます。
逆に、アイロンで無造作な動きを作れば、ワックスだけでは表現できない、計算されたドライな質感を演出することも可能です。 - 髪質を、デザインする
生まれつきの強いクセを、自然なストレートに伸ばす。
あるいは、動きの出ない退屈な直毛に、まるで元々のクセ毛のような、柔らかなカールを創り出す。
ヘアアイロンは、あなたの髪質そのものを、理想のスタイルに合わせて自在にデザインすることができるのです。
メンズヘアセットのためのアイロン基本操作ガイド
正しい知識と手順で、安全に、そして効果的にヘアアイロンを使いこなしましょう。
アイロンの選び方
短いメンズヘアのセットには、プレートの幅が狭い(15mm〜24mm程度)ストレートアイロンが最も使いやすく、おすすめです。
細かい毛束も掴みやすく、繊細なニュアンスを表現するのに適しています。
最適な温度設定
基本的には、140℃〜160℃の間で設定するのが良いでしょう。
髪が細い方や、ダメージが気になる方は低めに、髪が太く、硬い方は少し高めに設定します。
いきなり高温で試すのではなく、低い温度から始め、自分の髪質に合った温度を見つけることが大切です。
180℃を超えるような高温は、髪に深刻なダメージを与えるリスクがあるため、注意が必要です。
基本の「Cカール」の作り方
最も多用する、基本中の基本テクニックです。
少量の毛束をアイロンで挟み、地面と平行に引き出します。
そして、毛先に向かって、手首を返すようにして、アルファベットの「C」のような、半円を描きます。
このCカールを、前髪やトップの根元付近に入れることで、ふんわりとした自然なボリュームを生み出すことができます。
応用編「S字カール(波打ち)」の作り方
より複雑で、動きのあるスタイルを創るための応用技術です。
Cカールを作った毛束の少し下を、今度は逆方向のCカール(逆Cカール)を作るようにアイロンを通します。
これを繰り返すことで、波のような「S字」のウェーブが生まれます。
マッシュスタイルや、センターパートの毛流れを創る際に非常に有効です。
アイロンを活かす。プロのスタイリング手順
いつもの手順に、アイロンを正しく組み込むだけで、仕上がりは劇的に変わります。
- 完全に乾かす
ドライヤーで、髪の根元から、水分が完全になくなるまで乾かします。
水分が残ったままアイロンを通すと、水蒸気爆発を起こし、髪に深刻なダメージを与える原因になります。 - アイロンでベースを作る
上記のテクニックを使い、髪全体にベースとなる動きやカールをつけていきます。
この段階で、スタイルの7割〜8割は完成しているイメージです。 - ワックスを馴染ませる
スタイリング剤(ワックスなど)を、いつもより少なめに手に取ります。
そして、アイロンで作ったカールや動きを、一度リセットするような気持ちで、髪全体に馴染ませます。 - シルエットを整える
最後に、指先で毛束をつまみ、アイロンで作ったカールを再び引き出すようにして、全体のシルエットを整えます。
これにより、ただのパーマ風ではない、計算された束感が生まれます。
なぜ、プロのカットはアイロンセットがしやすいのか
「手順通りにやっても、プロのようにうまくいかない」
その差は、あなたの技術だけでなく、全ての土台となる「カット」そのものにあるのかもしれません。
- アイロンが活きる「毛量調整」
プロの理容師は、お客様が自宅でアイロンを使うことを前提に、熱が均一に通りやすく、そして美しい毛束が生まれやすいように、髪の内側の毛量を、見えない部分で緻密に調整しています。 - 動きが生まれる「質感カット」
レザー(カミソリ)や、特殊なセニングシザー(すきバサミ)を使い、毛先に軽さや方向性を与えることで、アイロンでほんの少し熱を加えるだけでも、劇的に動きが出るようにデザインされています。 - 究極の時短「アイロンパーマ」という選択肢
毎日のアイロンセットすら面倒、という方のために、私たち理容室には「アイロンパーマ」という究極の選択肢があります。
ヘアアイロンで作ったカールや毛流れを、そのままパーマで形状記憶させてしまう技術です。
これにより、朝は髪を乾かすだけで、完璧なスタイルが再現可能になります。
まとめ
ヘアアイロンは、あなたの毎日のヘアセットのクオリティを、間違いなく飛躍的に向上させてくれる、非常に強力な武器です。
しかし、その武器の性能を120%引き出すのは、アイロンが最も活きるように、ミリ単位で計算され尽くした、プロの「ベースカット」に他なりません。
最高のカットは、あなたの毎日のスタイリングを、面倒な作業から、より簡単に、より楽しく、そしてよりクリエイティブな自己表現の時間へと変えてくれます。
あなたの「なりたい」を、アイロンセットで実現しませんか。
そのための最高の土台作りは、私たちプロフェッショナルにお任せください。