ヘアカラーの仕上がりを決める「補色」とは?プロが操る色彩の魔法
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同じアッシュ系のヘアカラーで染めてもらったのに、なぜか自分の髪はすぐに赤みが強く出てきてしまう。そんな経験はありませんか。その原因は、あなたの髪が元々持っている「地毛の色」と、それを打ち消すための「補色」の関係にあるかもしれません。プロのヘアカラー技術の、まさに心臓部とも言える「補色」の世界。この記事では、理想の髪色を叶えるために不可欠な、補色の基本的な知識とその重要性について、誰にでも分かりやすく解説していきます。
Contents
まずは基本から、ヘアカラーにおける「補色」の仕組み
「補色」とは、あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、美しいヘアカラーを創り出す上で欠かせない、色彩理論の基本です。
補色の基本
- 色相環における正反対の色
色鉛筆の色などを、虹の順番で円状に並べたものを「色相環」と呼びます。この色相環で、ちょうど正反対の位置にある色の組み合わせのことを「補色」と言います。 - 色を打ち消し合う効果
補色同士の色を混ぜ合わせると、お互いの色味を打ち消し合い、彩度のない「無彩色(グレーや、にごりのないブラウン)」に近づくという、不思議な性質を持っています。 - ヘアカラーへの応用
プロの理容師は、この性質を巧みに利用しています。お客様の髪が元々持っている「消したい色(赤みや黄みなど)」を、その補色となるカラー剤を混ぜ込むことで打ち消し、にごりのないクリアな発色を可能にしているのです。
日本人の髪と「補色」、なぜこれほど重要なのか
特に、日本人の髪を染める上で、この補色の知識は非常に重要視されています。その理由は、私たちの髪質にあります。
日本人の髪質と補色の関係
- 多くの日本人が持つ「赤み」の色素
多くの日本人の地毛のメラニン色素には、「赤褐色」の色素が非常に多く含まれています。そのため、ただ明るくブリーチしただけでは、髪は黄色や金髪になるのではなく、多くの場合、赤みやオレンジみが強く残ってしまいます。 - 「赤み」が透明感カラーの邪魔をする
近年人気の高い、アッシュやオリーブ、グレージュといった透明感のある寒色系のカラーは、この赤みやオレンジみとは正反対の性質を持つ色です。赤みが残ったままこれらの色を乗せても、色が混ざり合ってしまい、濁ったような色になってしまいます。 - 補色こそが、クリアな発色の鍵
そこで、この邪魔になる赤みやオレンジみを消すために、その補色である「緑(マット系)」や「青(アッシュ系)」の染料をカラー剤に混ぜ込むことが、美しい透明感カラーを実現するための絶対条件となるのです。
これだけは知っておきたい、代表的な補色の組み合わせ
サロンでのカウンセリングや、ご自身の髪色を理解する上で、代表的な補色の関係を知っておくと非常に役立ちます。
代表的な補色
- 「赤み」を消す補色 → 「緑(マット)」
カラーをすると、いつも髪が赤っぽく、オレンジっぽくなってしまうという方は、髪の赤みが強いタイプです。アッシュ系などの寒色系にしたい場合、補色である緑系の色味を混ぜることで、赤みを効果的に打ち消すことができます。 - 「黄み」を消す補色 → 「紫(バイオレット)」
ブリーチをしてハイトーンカラーを目指す際に、必ず現れるのが「黄色み」です。この黄色みを消し、ホワイトやシルバー系の無彩色に近づけるために、補色である紫の色素をごく少量加えます。紫シャンプー(ムラシャン)も、この原理を応用したアイテムです。
補色のコントロールは、プロの理容師の腕の見せ所
ここまで解説してきた通り、補色の活用は、美しいヘアカラーを創り出す上で不可欠です。しかし、これを完璧にコントロールするには、専門的な知識と豊富な経験が求められます。
プロにしかできないこと
- セルフカラーでは不可能
市販のカラー剤を使って、ご自身の髪にどのくらいの赤みが残っているかを正確に判断し、それに合わせて適切な量の補色を混ぜ込むことは、専門知識がなければ絶対に不可能です。 - ミリグラム単位の緻密な調合
プロの理容師は、お客様の現在の髪の状態をプロの目で正確に診断し、ベースとなるカラー剤に、補色となる薬剤を1グラム単位、時にはそれ以下の繊細なレベルで微調整します。このオーダーメイドの調合こそが、あなただけの完璧な色を創り出すのです。 - 色落ちまでを計算した処方
さらに、経験豊富なプロは、色が落ちてきた時に、嫌な赤みや黄みが出てこないように、あらかじめ退色を予測して補色を配合しています。これにより、時間が経っても美しい色合いが持続します。
まとめ
ヘアカラーにおける「補色」とは、単に希望の色を髪に乗せるだけでなく、髪が持つ不要な色を巧みに「引き算」し、理想の色をよりクリアに「足し算」するための、高度で専門的な技術です。あなたがSNSなどで目にする、あの外国人風の、にごりのないクリアな透明感カラーは、この補色を完璧に使いこなすプロの理容師だからこそ創り出せる、まさに芸術品なのです。あなたの髪が持つ「消したい色」の悩みを解決し、最高の髪色を手に入れるために、ぜひ一度、色彩を熟知した専門家にご相談ください。
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