グリース前のドライヤーが鍵|プロが教えるヘアセットの土台作り
多くの男性が日々のヘアスタイリングを行う際、その意識は「どのスタイリング剤を使うか」「どうやって付けるか」といった、スタイリング剤そのものに集中しがちです。しかし、私たちプロのスタイリストが、お客様のヘアスタイルを創り上げる上で、実は最も時間をかけ、そして重要視している工程、それはスタイリング剤を付ける前の「ドライヤー」の工程にあります。
ヘアグリースの性能を120%引き出し、一日中崩れない完璧なスタイルを創り出す秘訣は、まさしくこのドライヤーの使い方に隠されているのです。この記事では、あなたのヘアセットを劇的に変える、ドライヤーを使った「スタイルの土台作り」について、その重要性から具体的なテクニックまで詳しく解説していきます。
なぜグリースを付ける前にドライヤーが不可欠なのか
なぜ、ただ髪を乾かすだけの作業に思えるドライヤーが、それほどまでに重要なのでしょうか。それは、ドライヤーが単なる乾燥機ではなく、ヘアスタイルを創り出すための、最もパワフルなツールだからです。
役割1:ヘアスタイルの「設計図」を作る
ドライヤーの役割は、髪の根元の立ち上がり、全体のボリューム感、そして美しい毛流れの方向性といった、ヘアスタイル全体の骨格、すなわち「設計図」を作ることです。この設計図がしっかりしていなければ、どんなに優れたグリースを使っても、美しい建築(ヘアスタイル)は完成しません。
役割2:スタイリング剤の効果を最大化する
しっかりとドライヤーで土台が作られていれば、髪はすでにまとまりやすい状態になっています。そのため、ごく少量のグリースでもスタイルが簡単に決まり、そのキープ力も格段に向上します。逆に、この土台がないと、スタイリング剤の重さや、髪が本来持つクセに負けて、すぐにスタイルは崩れてしまいます。
【基本編】ドライヤーを使った正しいスタイルの土台作り
それでは、プロが実践する、ドライヤーを使った基本的な土台作りの手順を見ていきましょう。
ステップ1:まずは髪全体を根元からしっかり濡らす
乾いた髪にドライヤーを当てても、寝癖や生え癖は直りません。スタイリングを始める前には、必ず髪の根元からしっかりと濡らし、一度髪をリセットすることがスタートラインです。
ステップ2:タオルドライで余分な水分を取る
次に、ゴシゴシと擦るのではなく、タオルで優しく頭皮と髪を揉み込むようにして、水滴が垂れてこない程度まで、余分な水分をしっかりと拭き取ります。
ステップ3:根元から乾かし、ボリュームと毛流れを作る
ドライヤーは、必ず「根元」から乾かしてください。ボリュームを出したいトップの部分は、髪を持ち上げたり、作りたい毛流れとは逆の方向から風を当てたりして、根元に空気を入れるように乾かします。逆に、ボリュームを抑えたいサイドや襟足は、上から下に風を当てるようにして、タイトに乾かします。
ステップ4:【プロの技】冷風で形を記憶させる
これがプロとアマチュアを分ける重要なテクニックです。温風で全体の形が8割方決まったら、最後にドライヤーを「冷風」に切り替え、髪全体、特に形をキープしたい根元部分に当てます。髪は、温められて形が作られ、冷える時にその形が記憶される性質があります。このひと手間で、スタイルの持続性は劇的に向上します。
グリースを付けた後にドライヤーは使うべき?
基本的には、グリースを付けた後にドライヤーの強い温風を当てることはお勧めしません。せっかくのグリースの艶感が失われたり、質感が変わってしまったりする可能性があるためです。グリースは、ドライヤーで作り上げた土台の上で、質感の調整とスタイルの維持を補助する役割、と覚えておきましょう。
完璧な土台作りを支えるサロン専売品
ドライヤーで完璧な土台を作り上げた後、そのポテンシャルを最大限に引き出すのが、高品質なスタイリング剤の役割です。サロンで私たちが使用するプロ仕様のグリースは、ドライヤーで作った繊細なボリューム感や毛流れを、その重さで潰してしまうことなく、軽やかな使用感でスタイルをサポートできるように、テクスチャーが緻密に計算されています。
まとめ
ヘアグリースを使ったヘアセットの成功は、その前に使う「ドライヤー」で9割が決まる、と言っても過言ではありません。これまでドライヤーを「ただ髪を乾かすための道具」だと考えていた方も、ぜひ明日からは「スタイルを創るための最も重要な道具」へと意識を変えてみてください。この基本をマスターすることが、あなたのスタイリングをプロのレベルへと引き上げる、最も確実な近道です。