【剛毛の男性へ】ワックス選びで、もう失敗しない。硬い髪を操るプロのスタイリング術
毎朝、時間をかけてワックスでヘアスタイルをセットしても、会社や学校に着く頃にはもう元通り。硬くて言うことを聞いてくれないご自身の「剛毛」に、ほとほと手を焼いてはいませんか。その尽きることのないスタイリングの悩みは、お客様がお使いのワックスが悪いのでも、お客様の技術が足りないのでもありません。ただ、その力強い髪質に合った「選び方」と「使い方」を知らないだけなのかもしれないのです。この記事では、剛毛の髪を自由自在に操るための、プロが実践するスタイリング剤の選び方と、その効果を最大限に引き出す使い方について、詳しく解説してまいります。
なぜ剛毛は、ワックスでのスタイリングが難しいのか
多くの方が剛毛のスタイリングに難しさを感じるのには、その髪質が持つ、二つの大きな特性が関係しています。一つ目は、髪一本一本が持つ、非常に強い「反発力」です。ハリとコシが強いため、ワックスで一度形を整えても、髪が常に元の真っ直ぐな状態に戻ろうとします。これが、時間が経つとスタイルが崩れてしまう最大の理由です。二つ目は、スタイリング剤の「浸透しにくさ」です。髪の表面を覆うキューティクルが厚くしっかりしているため、ワックスが髪の内部まで馴染みにくく、表面で滑ってしまいがちです。これが、「ワックスを付けてもベタつくだけで、うまくセットできない」と感じる原因となっているのです。
剛毛を制圧する、正しいスタイリング剤の選び方
この力強い髪をコントロールするためには、その反発力に負けない、適切な種類のスタイリング剤を選ぶことが不可欠です。「ワックス」という言葉の枠にとらわれず、ご自身の目指すスタイルに合わせて、以下の選択肢をご検討ください。
ハードワックス/クレイワックス
高いセット力とキープ力を持ち、ドライな質感で、しっかりとした束感を創り出したい場合に最適です。剛毛の力に打ち勝つ、強力なホールド力が魅力です。
グリース/ポマード
美しいツヤ感と、強いセット力を両立させたいのであれば、グリースやポマードが最も適しています。剛毛の広がりをタイトに抑え込み、一日中まとまりのある、洗練されたスタイルを維持します。七三分けなどのクラシカルなスタイルから、パーマヘアの質感表現まで、幅広く活躍します。
ジェル
最も強力な固定力を持ち、髪をパリッとした質感に仕上げます。ベリーショートやフェードスタイルで、髪を完全に固定し、微動だにしない完璧なスタイルを創りたい場合には、最強の選択肢となります。
効果を120%引き出す、プロが教えるワックスの付け方
最高のスタイリング剤を選んだとしても、その付け方が間違っていては、その能力を十分に発揮できません。プロが実践する、最も重要な手順は「内側から付ける」ことです。
最適なタイミングは「半乾き」
まず、スタイリングは髪が完全に乾いた状態ではなく、タオルドライ後、ドライヤーで8割ほど乾かした、少し湿り気のある状態から始めるのがベストです。これにより、スタイリング剤が髪に馴染みやすくなり、セット力も向上します。
付け方の鉄則
適量を手に取ったら、手のひら、そして指の間まで、透明になるまで完璧に伸ばしてください。そして、髪の表面から付けるのではなく、後頭部やトップの「内側」から、髪の根元を立ち上げるように、全体をかき混ぜるように大胆に馴染ませていきます。髪全体の土台を内側からしっかりと作り上げた後、最後に指先に残ったスタイリング剤で、毛束をつまんだり、毛流れを整えたりして、表面のディテールを創り上げていくのです。この「内側から」という手順こそが、スタイルを一日中キープするための、最大の秘訣です。
全てのスタイリングは、最高の「カット」という土台の上に
これまで、スタイリング剤の選び方や使い方について解説してまいりましたが、どんなに優れた製品を、正しい方法で使ったとしても、その土台となるヘアカットがお客様の髪質に合っていなければ、日々のスタイリングは非常に困難なものとなります。剛毛の持つ強い力を巧みに受け流し、スタイリング剤が馴染みやすいように、毛量を調整し、質感を創り出すこと。この「スタイリングしやすい髪の土台」をデザインすることこそが、私たちプロの理容師の最も価値ある技術なのです。
毎朝のスタイリングを、苦痛な時間から、自分を表現するための創造的な楽しい時間へ。そのための最高のパートナーとして、ぜひ一度、私たち誠実な理容師にご相談ください。