【剛毛メンズのヘアアレンジ術】硬い髪でも自由自在。印象を変えるスタイリングの秘訣
硬く、多く、そして、なかなか言うことを聞いてくれない。そんな「剛毛」の髪質をお持ちの方は、「自分にはヘアアレンジを楽しむことなどできない」と、日々のスタイリングを諦めてしまってはいませんか。いつも同じような髪型になりがちで、雑誌で見るようなお洒落なスタイルとは無縁だと感じているかもしれません。しかし、その力強く、しっかりとした髪質は、正しい知識とテクニックさえあれば、実は多彩な表情を見せてくれる、最高の素材となり得るのです。この記事では、剛毛の男性がヘアアレンジを存分に楽しむための、プロの理容師が教えるスタイリングの秘訣について、詳しく解説してまいります。
なぜ剛毛はヘアアレンジが難しいと感じるのか
多くの方が剛毛のヘアアレンジに難しさを感じるのには、その髪質特有の性質が関係しています。髪一本一本が持つ強いハリとコシは、柔らかな毛流れや繊細な束感を作り出す際の大きな「抵抗力」となります。また、髪の量と重さがあるため、せっかく作った動きも、時間が経つと重力に負けてしまいがちです。これらの特性を、まずは「敵」としてではなく、「個性」として理解することが、ヘアアレンジを成功させるための重要な第一歩となります。
剛毛ヘアアレンジの基本戦略「活かす」と「抑える」
剛毛のヘアアレンジにおける基本的な考え方は、非常にシンプルです。一つは、髪が持つハリやボリュームを、むしろ「活かす」という考え方です。髪の立ち上がりやすい性質を利用して、立体感のある力強いスタイルを創り出します。もう一つは、スタイリング剤の力を借りて、広がりやボリュームを「抑える」という考え方です。髪をタイトにまとめ、ツヤ感などを利用して、洗練されたスタイルを目指します。この二つの戦略を、その日の気分やファッションに合わせて使い分けることで、お客様のヘアアレンジの幅は無限に広がります。
印象を劇的に変える。剛毛のためのヘアアレンジ実例
それでは、具体的なヘアアレンジの方法をいくつかご紹介いたします。
アップバングアレンジ
前髪を上げて、おでこをすっきりと見せる「アップバング」は、剛毛の立ち上がりやすい性質を最大限に活かせる、まさに王道のアレンジです。ドライヤーで前髪の根元を下から上に乾かし、しっかりと立ち上げるクセをつけます。その後、ホールド力のあるワックスやジェルで形を整えれば、爽やかさと男らしさを両立した、清潔感のあるスタイルの完成です。
センターパートアレンジ
知的で、少し色気のある雰囲気を演出できる「センターパート」も、剛毛の方におすすめです。このアレンジのポイントも、ドライヤーで分け目の根元をふんわりと立ち上げること。その後、グリースやオイルなど、ツヤの出るスタイリング剤で毛流れを整えれば、髪の重さを活かした、まとまりのある上品なスタイルになります。
無造作パーマ風アレンジ
パーマをかけていなくても、スタイリングだけでパーマのような動きを表現することも可能です。少し硬めのワックスを髪全体に馴染ませた後、指先で毛束をランダムにつまみ、ねじるようにして動きをつけていきます。剛毛の持つボリューム感が、逆にリアルなパーマのような立体感を生み出し、無骨でお洒落な印象を創り出します。
アレンジの成否を分ける、スタイリング剤の選び方と使い方
剛毛のヘアアレンジを成功させるためには、その力強い髪に負けない、適切なスタイリング剤を選ぶことが不可欠です。ホールド力の高いジェルやグリース、ポマード、あるいは硬めのファイバーワックスなどが、その代表格です。そして、最も重要なのがその付け方です。スタイリング剤は、まず手のひら全体に、透明になるまで完璧に伸ばしてください。そして、髪の表面にだけ付けるのではなく、髪の内側、根元に近い部分から、髪全体をわしづかみにするように、しっかりと馴染ませることが鉄則です。この土台作りがあって初めて、毛先のディテールを整える作業が活きてくるのです。
全てのアレンジは、最高の「カット」という土台から
これまで様々なアレンジ方法をご紹介してまいりましたが、どんなに高度なテクニックを駆使しても、その土台となるヘアカットが整っていなければ、その効果は半減してしまいます。髪が動きやすいように毛先の質感を軽くしたり、アレンジの邪魔になる部分の毛量を的確に減らしたりと、お客様がご自宅で、簡単に、そして楽しくヘアアレンジができるような「土台」を創り出すこと。それこそが、私たちプロの理容師が最も価値を置く、専門的な技術です。
その硬い髪は、アレンジができないのではなく、まだその方法を知らないだけです。ぜひ一度、私たちに、お客様の髪が持つ無限の可能性を引き出すお手伝いをさせてください。