【剛毛の男性へ】ブリーチで髪は「柔らかく」なる?その真相と、知っておくべきリスク
硬く、ごわつく、しっかりとした「剛毛」。その扱いにくい髪質を、しなやかで、ふんわりとした柔らかい質感に変えたい。そう願う中で、「ブリーチをすると、髪が柔らかくなる」という話を、どこかで耳にしたことはございませんか。その噂は、ハイトーンカラーという魅力的なデザインと、髪質改善という願望を同時に叶えてくれる、まるで魔法のような裏技に聞こえるかもしれません。しかし、その甘い言葉の裏には、お客様が必ず知っておくべき、大きなリスクが隠されているのです。この記事では、その真相について、プロの理容師が誠実にお話しいたします。
なぜブリーチで、剛毛が「柔らかくなった」と感じるのか
まず、「ブリーチをすると、剛毛が柔らかくなったように感じる」という現象は、実際に起こり得ます。しかし、そのメカニズムを正しく理解することが非常に重要です。ブリーチ剤は、髪の色素(メラニン)を分解して髪を明るくすると同時に、髪の内部にあるタンパク質や脂質といった、髪の強度やハリ・コシを司る、いわば「骨格」となる成分をも破壊してしまいます。つまり、髪の芯が失われ、内部がスカスカになることで、髪本来のしっかりとした質感が失われる。この、髪が「弱った」状態が、結果として「柔らかくなった」という手触りとして感じられるのです。これは、決して髪が健康的に、しなやかになったわけではない、ということをご理解ください。
その「柔らかさ」と引き換えに失うもの
この疑似的な柔らかさと引き換えに、髪は多くのものを失います。最大の代償は、言うまでもなく「深刻なダメージ」です。髪の骨格を失った髪は、潤いを保つ力をなくし、「極度の乾燥」や「ごわつき」、「パサつき」を引き起こします。元々の硬い髪質と、ダメージによるごわつきが相まって、かえって扱いにくい髪質になってしまうことも少なくありません。そして、ダメージが進行すれば、髪はもはやその形を保てなくなり、「切れ毛」や「枝毛」が多発するという、取り返しのつかない事態に繋がるリスクもございます。
剛毛を「本質的に柔らかく見せる」ための、プロの提案
もし、お客様の本当の目的が、ハイトーンカラーにすることではなく、純粋に「髪を柔らかく、扱いやすくしたい」ということであれば、私たちは、ブリーチよりもはるかに安全で、効果的な方法をご提案いたします。
提案1:「パーマ」で質感をコントロールする
薬剤の力で髪の内部の結合を組み替え、形状を変化させるパーマは、ブリーチに比べて格段に少ないダメージで、硬い髪に、本物の柔らかな動きや、しなやかなカールを与えることができる、最も有効な手段です。
提案2:「カット」で軽やかさを演出する
レイヤーカットや、毛先の質感を調整するカット技術によって、髪の重さを取り除き、軽やかな動きを出すことも可能です。これにより、見た目の印象を劇的に柔らかく、そして洗練されたものに変えることができます。
提案3:「ヘアケア」で内側から潤す
日々のシャンプーやトリートメントを、保湿効果の高いものに見直すことで、乾燥によるごわつきを抑え、髪本来が持つ、しなやかな質感を最大限に引き出すことも重要です。
どうしてもブリーチで、色と柔らかさを両立させたいあなたへ
もちろん、ハイトーンカラーのデザイン性と、質感の変化の両方を求めるお客様もいらっしゃるでしょう。剛毛へのブリーチは、お客様の髪質を正確に見極め、ダメージを最小限に抑えるためのケア剤(プレックス剤など)を併用し、薬剤の強さや放置時間を完璧にコントロールする、極めて高度な技術と知識が必要不可欠です。安易なセルフブリーチや、髪質への理解が浅い施術は、お客様の大切な髪を、深刻な危険に晒す行為にほかならないのです。
あなたの髪質に、最適な「柔らかさ」を処方します
お客様の「髪を柔らかくしたい」という願いを叶える方法は、決して一つではございません。私たち誠実な理容師は、お客様の髪の状態をプロの目で正確に診断し、ブリーチという選択肢のメリットとリスクを正直にお伝えした上で、パーマ、カット、ヘアケアといった無数の引き出しの中から、その方にとって最もリスクが少なく、最も効果的な「柔らかさへの処方箋」を作成する、髪の主治医のような存在です。ハイリスクな決断を下される前に、ぜひ一度、私たち専門家にご相談ください。