子どものスポーツ刈り、ご自宅での「切り方」|失敗しないための、プロが教える注意点
そのバリカンを、手にする前に
夏休み、元気に遊ぶお子様を見て、「家で、バリカンで短く切ってあげようかな」。時間や費用のことを考え、そう思われる保護者の皆様は、少なくないでしょう。愛情を込めて、お子様の髪を切ってあげる。それは、とても素晴らしいことです。しかし、その一方で、一見すると簡単に見えるスポーツ刈りには、実は、多くの隠れた落とし穴があり、ほんの少しの失敗が、取り返しのつかない虎刈りや、不格好なシルエットに繋がってしまう危険性も秘めています。この記事では、ご自宅でお子様のカットに挑戦する前に、ぜひ知っておいていただきたい、プロが実践する基本的な手順と、失敗しないための重要な注意点について、詳しく解説します。
カットを始める前に。最低限準備したい道具
まず、作業をスムーズに、そして安全に進めるために、以下の道具を準備することをお勧めします。
・バリカンと、複数のアタッチメント
長さの異なる、複数のアタッチメント(ミリ数を調整するパーツ)が付属しているものを用意しましょう。
・ハサミ(髪切り用のもの)
工作用ではなく、必ず、髪を切るために作られた、よく切れるハサミを用意してください。
・すきバサミ
髪の量を減らし、質感を調整するために使います。
・コーム(櫛)
髪を分け取ったり、長さを揃えたりする際に、必ず必要になります。
・ケープ
切った髪が、服や首につくのを防ぎます。
・霧吹き
髪を湿らせることで、カットがしやすくなります。
ご家庭でできる、スポーツ刈りの基本的な「切り方」
ここでは、ご家庭で、できるだけ失敗のリスクを抑えるための、基本的なカットの手順をご紹介します。
・STEP1:全体の長さをイメージし、ブロッキングする
まず、トップ、サイド、バックといったように、切る部分を大まかに分け(ブロッキング)、どの部分を、どのくらいの長さにしたいかを、あらかじめ決めておきましょう。
・STEP2:サイドとバックを、一番「長い」ミリ数から刈る
これが、失敗しないための最も重要なポイントです。いきなり短いアタッチメントで刈るのではなく、必ず、あなたが最終的にしたい長さよりも、「長い」ミリ数のアタッチメント(例えば12mmや15mm)から、試しに刈り始めてください。一度短く切ってしまった髪は、元には戻せません。
・STEP3:徐々に短いミリ数で、下を整える
サイドとバックの下の部分(襟足や耳周り)を、より短くしたい場合は、先ほどよりも短いミリ数のアタッチメントに付け替え、慎重に刈り進めます。この時、長い部分と短い部分との「境目」が、線のようにくっきりと付いてしまわないように、バリカンを少し浮かせるようにして、ぼかすのが非常に難しいポイントです。
・STEP4:トップをハサミでカットする
トップの長い部分は、ハサミでカットします。髪を指で挟み、サイドの短い部分との繋がりを意識しながら、少しずつ切り進めます。
・STEP5:耳周りや襟足を、細かく整える
最後に、耳周りや襟足の産毛などを、アタッチメントを外したバリカンや、ハサミで慎重に整えます。お子様が動いてしまうと、怪我に繋がる、最も危険な工程です。
「プロの仕上がり」との、決定的な差はどこにあるのか
ここまで読んで、「思ったよりも、ずっと複雑で、難しそうだ」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。その通りです。プロの理容師と、ご家庭でのカットとの間には、仕上がりに、いくつかの決定的な差が生まれます。
・差1:「繋がり(グラデーション)」の美しさ
プロは、複数のアタッチメントと、ハサミを巧みに使い分け、どこにも境目のない、滑らかで美しいグラデーションを創り上げます。これが、スタイルに立体感と、洗練された印象を与えるのです。
・差2:「質感調整」による、軽やかさ
プロは、ただ長さを切るだけではありません。髪の内側の毛量を、すきバサミなどで的確に調整し、スタイルに軽さと、動きやすさを与えます。これにより、重たいヘルメットのような印象になるのを防ぎます。
・差3:「速さ」と「安全性」
そして何より、私たちプロは、お子様のカットに慣れています。じっとしているのが苦手なお子様を、飽きさせることなく、安全に、そして素早く、完璧なスタイルに仕上げる技術を持っています。
もし、失敗してしまったら…
万が一、セルフカットで、虎刈りや、取り返しのつかない段差ができてしまった場合。どうか、落ち込まないでください。そんな時こそ、私たちプロの出番です。私たちは、失敗してしまった状態から、それを活かし、あるいは修正し、お洒落なスタイルへと生まれ変わらせる、「リカバリーカット」の専門家でもあります。
まとめ
お子様の髪を、愛情を込めてカットしてあげる。それは、かけがえのない、素晴らしい時間です。しかし、その一方で、お子様の安全性と、最高の仕上がり、そして保護者の皆様の貴重な時間を考えた時、その仕事は、私たちプロの理容師に任せていただくというのも、非常に賢明な選択ではないでしょうか。失敗してしまった後の、お直しのご相談も、もちろん大歓迎です。あなたと、あなたのお子様のご来店を、心よりお待ちしております。