「接客業」と「サービス業」の違いとは?全ての仕事の土台となる考え方
「あなたの職業は何ですか?」と聞かれた時、「サービス業です」あるいは「接客業です」と答える方は多いのではないでしょうか。
この二つの言葉は、日常会話ではほとんど同じ意味で使われることもありますが、厳密にはその範囲や意味合いが異なります。
この違いを理解することは、ご自身の仕事の立ち位置をより深く理解し、プロフェッショナルとしての意識を高める上で、非常に重要です。今回は、この二つの言葉の基本的な意味と、その関係性について解説します。
まず、より広い概念である「サービス業」を理解する
まず、「サービス業」とは、産業を分類する際の、非常に大きな枠組みの一つです。
産業は、一般的に以下の3つに大別されます。
- 第一次産業:農業、林業、漁業など、自然から直接資源を得る産業。
- 第二次産業:製造業、建設業など、第一次産業で得た資源を加工する産業。
- 第三次産業:第一次・第二次以外の全て。これが「サービス業」です。
サービス業の最大の特徴は、自動車や食品のような「形のある物(有形財)」ではなく、知識や技術、情報、時間といった、「形のない価値(無形財)」を提供することにあります。
- サービス業に含まれる職種の例
運輸・通信業(バス、鉄道、ITエンジニアなど)
金融・保険業(銀行員、保険外交員など)
医療・福祉(医師、看護師、介護士など)
教育(教師、塾講師など)
飲食店・宿泊業(調理師、ホテルマンなど)
理容・美容業(理容師、美容師など)
このように、非常に幅広い職種が「サービス業」という大きな括りの中に含まれています。
次に、その中核をなす「接客業」を理解する
次に、「接客業」とは、この広範な「サービス業」の中に含まれる、一つのカテゴリーです。
その最大の特徴は、その名の通り、「お客様と直接、対面で接する」という点にあります。
- 「人」そのものが、サービスの品質を大きく左右する
接客業では、提供するサービスや商品の品質はもちろんのこと、それを提供するスタッフの立ち居振る舞いや、言葉遣い、表情といった、「人」そのものが、お客様の満足度を決定づける、最も重要な要素となります。
【図解】二つの「業」の関係性
この二つの関係性は、以下のような図でイメージすると、非常に分かりやすいでしょう。
【サービス業(大きな円)】
・形のない価値を提供する全ての仕事
(例:IT、金融、医療、教育、理容など)
【接客業(内側にある、小さな円)】
・サービス業の中でも、特にお客様と直接対面する仕事
(例:販売員、ホテルマン、理容師など)
つまり、「接客業」は、広大な「サービス業」という大陸の中にある、人と人とのふれあいを最も大切にする、「おもてなしの国」のような存在、と言えるかもしれません。
【私たちの仕事から】理容師という「サービス業」であり「接客業」
私たち理容師の仕事は、この二つの要素を、非常に高いレベルで兼ね備えている職業です。
- 「サービス業」として
私たちは、お客様の髪を整えるという「技術」や、心身をリフレッシュしていただく「時間」といった、形のない価値(サービス)を提供しています。
- 「接客業」として
そのサービスは、お客様と一対一で、長時間にわたって密にコミュニケーションを取りながら、提供されます。私たちの人間性そのものが、サービスの品質に直結する、まさに接客業の最前線です。
全ての仕事は、誰かのための「サービス」である
ここまで二つの言葉の違いを解説してきましたが、突き詰めて考えれば、どんな仕事も、その先にいる誰かを幸せにするための「サービス」である、と言えるのかもしれません。
その中でも、お客様の笑顔を直接見ることができる「接客業」は、そのやりがいを、最も肌で感じることができる、素晴らしい仕事です。
私たちは、サービス業であり、そして、接客業であることに、大きな誇りを持っています。その誇りを、日々の技術と、お客様一人ひとりへの心遣いに変えて、皆様のご来店を心よりお待ちしております。