なぜ、あの人はいつも穏やかなのか？―仏教に学ぶ「親切」の本質と心のあり方

目まぐるしく変化し、ストレスの多い現代社会。

私たちは、ついイライラしてしまったり、他人の些細な言動に心が波立ってしまったりすることがあります。

その一方で、どんな時も穏やかで、まるで深い湖のような静けさと、温かい「親切」の心を感じさせる人がいます。その人たちの揺るぎない心の平穏は、どこから来るのでしょうか。

その秘密は、もしかしたら、2500年以上の時を超えて受け継がれてきた「仏教」の智慧の中にあるのかもしれません。

この記事は、特定の宗教をお勧めするものではありません。現代を生きる私たちが、心を軽くし、より豊かに、そして穏やかに生きるためのヒントとして、仏教における「親切」の本質を探っていきます。

仏教が説く「親切」の核心―“慈悲”という心

仏教における「親切」を語る上で、その中心となるのが**「慈悲（じひ）」**という言葉です。これは、二つの異なる、しかし深く結びついた思いやりが一つになった、広大な心を指します。

• 慈（じ）：相手の幸福を純粋に願う心「慈」とは、親が我が子を思うように、見返りを求めることなく、ただ純粋に相手に楽しみや安らぎがもたらされることを願う心です。仏教の言葉で「与楽（よらく）」とも呼ばれます。
• 悲（ひ）：相手の苦しみを取り除きたいと願う心「悲」とは、他者が抱える苦しみを、まるで自分の苦しみであるかのように深く感じ、それを取り除いてあげたいと願う心です。これを「抜苦（ばっく）」と言います。

つまり「慈悲」とは、**「あらゆる生きとし生けるものの苦しみを取り除き（抜苦）、楽しみを与えたい（与楽）」**と願う、無条件の愛なのです。これは、単なる同情や憐れみとは一線を画す、自分と他人とを区別しない、どこまでも広く、深い心の状態を意味します。

「親切」は、自分をも救う―“利他”と“布施”の教え

仏教では、他者への親切な行いが、巡り巡って自分自身を救うことになると教えます。

利他（りた）の精神

他の人の利益を第一に考え、行動すること。これが「利他」の精神です。しかし、仏教には**「利他即自利（りたそくじり）」**という言葉があり、他者を利する行いは、結果的に自分自身の利益や心の平穏、そして徳となって返ってくる、と説きます。

布施（ふせ）の実践

「布施」とは、見返りを求めずに、他者に何かを無償で与えることです。これには、お金や物を施す「財施（ざいせ）」だけでなく、私たちも日常的に実践できる、様々な形の親切が含まれます。

• 和顔施（わがんせ）： 穏やかで、にこやかな表情で人に接すること。
• 言施（ごんせ）： 優しく、思いやりのある言葉をかけること。

こうした、日常の中のささやかな親切もまた、仏教においては非常に尊い「布施」の実践なのです。

なぜ、私たちは親切になれないのか？―仏教が説く「心の毒」

では、なぜ私たちの心は、「慈悲」の心とは程遠い、自分本位な考えや、攻撃的な気持ちに支配されてしまうことがあるのでしょうか。仏教では、その原因を**「三毒（さんどく）」**と呼ばれる、3つの根本的な煩悩にあると説きます。

• 貪（とん）： むさぼりの心。「もっと欲しい」「自分だけが得をしたい」という、際限のない欲望。
• 瞋（じん）： いかりの心。物事が自分の思い通りにならないことへの怒りや、他者への憎しみ。
• 癡（ち）： 真理を知らない心（おろかさ）。物事の本質を理解できず、自分中心の狭い視野でしか物事を考えられないこと。

仏教では、まず自分自身の心の中に、こうした「毒」が存在することに静かに気づき、それを少しずつ手放していく努力をすることが、穏やかで親切な心への第一歩だと教えています。

「慈悲」の心に触れる、穏やかな時間

こうした心のあり方は、知識として知るだけでなく、実際に穏やかで安心できる空間に身を置き、深く体感することが何よりも大切です。日々の喧騒や情報過多から意識的に離れ、自分自身と静かに対話できる「サンクチュアリ（聖域）」を持つこと。それは、現代人にとって非常に重要なセルフケアと言えるでしょう。

例えば、静かで落ち着いた雰囲気のメンズヘアサロンもまた、現代における、あなただけの小さな聖域となり得ます。

親切な理容師の仕事には、図らずも仏教の「慈悲」の精神が深く息づいています。

お客様が抱える髪の悩みやコンプレックスという苦しみを取り除き（悲）、理想のヘアスタイルという自信や**安らぎを与えたい（慈）**と、心から願う。

彼らのお客様に穏やかな表情で接する姿勢は、まさに**「和顔施」であり、丁寧で思いやりのある言葉遣いは「言施」と言えるでしょう。そのすべてが、見返りを求めない「利他」**の心から、ごく自然に生まれています。

そんな理容師との静かな対話と、心地よい施術に身を委ねる時間は、あなたの心から「三毒」のざわめきを鎮め、本来あなたが持っている、穏やかで親切な気持ちを取り戻させてくれる、一種の瞑想的な体験となるかもしれません。

まとめ

仏教が説く「親切」とは、すべてのものの幸福を願う、広大で温かい「慈悲」の心。そして、他者を利する行いが、巡り巡って自分自身をも利するという、深遠な「利他」の智慧です。

その心に近づくために、まず私たち自身の内側にある「心の毒」に気づき、それを少しずつ手放していくことから始めてみませんか。

難しく考える必要はありません。まずは、あなたが心からリラックスでき、穏やかな気持ちになれる時間と場所を見つけること。その心地よい静寂の中で、あなたの本来の親切心は、自然と輝きを取り戻していくはずです。

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岩下隼人

フレッシュネスバーバーショップ広報

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福岡県西鉄小郡駅前のメンズヘアサロン「FRESHNESS BARBER shop」の広報担当です。理容という仕事を通して人々の笑顔や幸福に貢献していきたいと思っています。
趣味：音声プラットフォームのVoicyを聴く（山口周さん、ちきりんさん、MBさんなど）。漫画やアニメを見る（少年ジャンプ作品など）。