【その段差、失敗かも?】フェードカットを“滑らか”に仕上げる、プロの技術
完璧なフェードカットを求めてサロンへ。しかし、仕上がりを鏡で見て、こう感じたことはありませんか?
「なんだか、刈り上げの途中に“線”や“段差”が見える…」
「もっと滑らかに、自然に繋がると思っていたのに…」
あるいは、これからフェードカットに挑戦しようとしているあなたは、「ツーブロックのように、はっきりとした段差がついてしまったらどうしよう」と、不安に感じているかもしれません。
そのあなたの感覚、そして不安は、非常に的を射ています。
なぜなら、本物のフェードカットに、意図しない不自然な「段差」は、決して存在しないからです。
この記事では、なぜフェードカットに「段差」ができてしまうのか、その原因と、段差のない完璧なスタイルを創り出す、プロの技術について、そのすべてを解説します。
フェードカットの「段差」とは何か?その正体と原因
まず、私たちが問題にしている「段差」の正体を、明確にしましょう。
これは、短い刈り上げ部分と、その上の少し長い髪との境界線が、滑らかに繋がっておらず、まるで“線”や“ブロック”のように、くっきりと見えてしまっている状態を指します。
では、なぜこのような段差が生まれてしまうのでしょうか。
原因は、ただ一つ。「ブレンディング(ぼかし)」と呼ばれる、極めて高度なカット技術の不足です。
フェードカットの命は、0mmなどの極端な短さから、トップの長い髪に向かって、色が徐々に、そして滑らかに変化していく**「グラデーション」**にあります。このグラデーションを創り出す過程で、異なる長さの髪同士を、完全に溶け合うように繋げる「ブレンディング」が不十分だと、そこに不自然な「段差」が生まれてしまうのです。
“段差”のない、美しいグラデーションを創り出すプロの技術
では、私たちプロの理容師は、どのようにして、この「段差」のない、完璧なグラデーションを創り出しているのでしょうか。その裏側には、緻密に計算された、専門的な技術が存在します。
- 技術1:バリカン(クリッパー)の、巧みな操作私たちは、単にアタッチメントを付け替えて、下から上にバリカンを動かしているわけではありません。レバーの開閉による0.5mm単位の微調整や、手首のスナップを効かせて、弧を描くようにバリカンを抜いていく**「C-stroke」**といった技法を駆使し、色の境界線を徹底的にぼかしていきます。
- 技術2:ハサミとクシによる、究極の“繋ぎ”フェードカットのクオリティを最終的に決定づけるのが、この**「シザー・オーバー・コーム」**という技術です。バリカンで作った刈り上げ部分と、その上に乗るトップの長い髪との間に生まれやすい「角」や「段差」を、クシをガイドラインとして、ハサミでミリ単位の精度で削り取り、完璧に滑らかなシルエットへと繋げていきます。
- 技術3:骨格への、深い理解お客様一人ひとりの頭の形は、決して完全な球体ではありません。凹凸があります。その骨格を完璧に理解し、どこをどのくらい削り、どこをどのくらい残せば、最も美しいシルエットになるかを計算して、初めて「段差」のない、オーダーメイドのフェードは完成するのです。
意図的な「段差」?“ディスコネクション”との違い
ここで、一つの例外について触れておきましょう。ヘアスタイルの中には、**「ディスコネクテッド・アンダーカット」**のように、あえてトップの長い髪と、サイドの刈り上げ部分を“繋げず”、はっきりとした段差をデザインとして楽しむスタイルも存在します。
しかし、これは**意図的に、そしてシャープなラインで創り出された「デザイン」**です。フェードの途中に生まれてしまう、**意図しない、ぼやけた「線」や「段差」**とは、全くの別物です。
サロンで「段差のない」フェードをオーダーする方法
あなたが理想とする、滑らかなフェードを手に入れるための、簡単なオーダー方法です。
「フェードで、滑らかなグラデーションでお願いします」
「トップの髪とは、自然に繋げてください」
「ツーブロックのような、はっきりとした段差はつけないでください」
これらの言葉を伝えることで、あなたの「なりたいイメージ」は、理容師に正確に伝わります。もちろん、理想とする、美しいグラデーションのスタイル写真を見せていただくのが、最も確実です。
その“滑らかさ”は、理容師の経験と技術の証
最後に、これだけは知っておいてください。
フェードカットにおける、この「段差のない、滑らかなグラデーション」を創り出す技術は、メンズカットの中でも、最も理容師の基本技術と、経験の差が現れる部分です。
それは、流行っているからという理由だけで、見よう見まねでできるものではありません。お客様一人ひとりの頭と真摯に向き合い、何年、何十年と、ミリ単位の世界で鍛錬を積み重ねてきた職人だからこそ、到達できる領域なのです。
まとめ
あなたが求める、本物のフェードカット。
それは、どこにも不自然な「段差」のない、息をのむほど滑らかで、美しいグラデーションを持つスタイルです。
そして、その芸術品とも言えるグラデーションは、プロの理容師の、緻密な計算と、揺るぎない技術によってのみ、創り出されるのです。
その違いは、言葉は必要ありません。ただ、鏡を見れば、そして、指で触れてみれば、一瞬でご理解いただけるはずです。
ぜひ一度、本物の“滑らかさ”を、体験しに来てください。