「くせ毛」と「短髪」は最高の相性。ノーセットで活かす髪型の秘訣
「ご自身の髪がくせ毛だから、短髪にするのは少し怖い」「短く切ってしまうと、かえって髪が広がって、まとまらなくなってしまうのではないか」。そのように、ご自身の髪質を理由に、挑戦したい髪型を諦めてしまっている男性は、実は非常に多くいらっしゃいます。長年、その生まれ持った髪質を悩みの種と感じ、毎朝の整髪に苦労を重ねてこられた方も、少なくないことでしょう。しかし、私たち髪の専門家の視点から申し上げますと、実は「くせ毛」と「短髪」は、適切なカットを施すことで、最高の相性を発揮する、素晴らしい組み合わせなのです。今回は、その理由と、整髪をしない「ノーセット」でも、くせ毛を魅力的な短髪スタイルに変えるための考え方についてお話しいたします。
なぜ「くせ毛」と「短髪」は相性が良いのか
多くの方が信じていらっしゃる「短くすると、くせが余計に広がる」という考えは、必ずしも正しいとは限りません。実は、髪が最も広がりやすく、まとまりにくいのは、肩にかかるような、少し重さのある中途半端な長さなのです。思い切って短くすることで、髪の重さがなくなり、くせ毛が持つ本来の自然な動きが、かえって扱いやすくなる場合が多くあります。くせ毛の持つ自然なうねりやカールは、短い髪に、直毛の方では決して表現できないような、生まれつきの立体感と動きを与えてくれる、かけがえのない個性なのです。
くせ毛を活かす短髪カットの絶対条件
整髪なしで、くせ毛の短髪を成功させるためには、カットの段階でいくつかの絶対的な条件を満たす必要があります。まず、お客様一人ひとりが持つ、くせの強さや種類を丁寧に見極め、その髪が最も美しく動く、あるいは最も自然にまとまる「最適な短さ」を見つけ出すこと。そして、広がりやすい部分、特に頭の角にあたるハチ周りなどの髪の内側を、外からは見えないように、緻密に毛量を調整すること。ただし、髪を軽くしすぎると、かえってパサつきの原因にもなるため、その絶妙なさじ加減こそが、私たち理容師の腕の見せ所となります。
くせ毛の方におすすめの短髪スタイル
これらの原則に基づいた、くせ毛の方にこそおすすめしたい、代表的な短髪のスタイルがございます。例えば、思い切って全体を短くすることで、癖の影響を最小限に抑えつつ、頭の頂点部分の僅かな動きをアクセントとして楽しむ「ベリーショート」。あるいは、横の部分を短くし、頭の頂点部分のくせを、自然な立ち上がりや動きとして活かす「ソフトモヒカン風」の髪型は、くせ毛の特性を最も魅力的に活かせるスタイルの一つです。また、広がりやすい横の部分をすっきりと刈り上げる「ツーブロック」は、髪型全体のボリュームを劇的にコントロールしやすくするため、くせ毛の方にとって、非常に心強い味方となってくれます。
日々の手入れで、さらに扱いやすく
優れたカットで整えられた髪を、ご自宅でより良い状態に保つための、簡単な手入れのコツもございます。まず、髪が濡れている状態は、癖が最も強く出る原因となります。お風呂上がりには、まず髪の根元からしっかりとドライヤーで乾かし、髪の水分を完全に取り除くことを心がけてください。また、くせ毛は乾燥しやすい性質を持っているため、洗い流さないタイプのトリートメントなどを、ほんの少量お使いいただくだけで、日中の広がりが抑えられ、まとまりが格段に向上します。
理容室で「悩み」と「希望」を伝える
理容室を訪れた際には、どうぞご自身の髪に関するお悩みを、ありのままお聞かせください。「くせ毛で広がりやすいのが悩みです」と、率直にお話しいただくことが、解決への最も重要な第一歩です。その上で、「手入れが楽な短髪にしたいのですが、この癖を活かして、ノーセットでも格好良く見せることはできますか」と、ご自身の悩みと希望をセットでご相談いただければ、誠実な理容師は、お客様が長年抱えてこられたお悩みと真摯に向き合い、プロとして最高の解決策を、共に見つけ出したいと考えるはずです。
コンプレックスは、最高の武器になる
これまで悩みの種だと思っていたご自身の「くせ毛」は、短髪という潔いスタイルと、その髪質を深く理解するカット技術に出会うことで、直毛にはない、躍動感と立体感を持つ、あなただけの「最高の武器」に変わり得るのです。整髪に頼らず、ご自身の個性を活かして輝く。その潔いスタイルは、周りの人々にも、自信に満ちた、大変魅力的な人物として映ることでしょう。お客様一人ひとりが持つ、その素晴らしい個性を、私たちの誠実な技術で最大限に引き出すお手伝いができれば、これに勝る喜びはございません。