整髪しない日のための、ヘアスプレー活用術。自然なまま一日を保つ秘訣
朝、鏡の前で髪を整えた際、整髪料を使わなくても自然にまとまり、心地よい気分で一日を始めた。多くの男性にとって、それは理想的な一日の始まりではないでしょうか。しかし、湿気の多い日や、少し風の強い日には、午後になると朝の状態が崩れてしまい、残念な気持ちになることも少なくありません。「ワックスなどを使って本格的に整髪をするのは少し面倒だが、ヘアスプレーをほんの少し使うだけで、この快適な状態を保つことはできないだろうか」。今回は、そんな賢明な思いに応える、新しいヘアスプレーの活用術についてお話しいたします。
発想の転換。「固める」のではなく「保護する」
まず、私たちがここでご提案するのは、ヘアスプレーに対する従来の考え方を、少しだけ変えてみるということです。ヘアスプレーと聞くと、髪をしっかりと固めて、特定の髪型を強制的に維持するための道具、という印象が強いかもしれません。しかし、整髪をしない「ノーセット」の髪に合わせるスプレーの役割は、それとは全く異なります。ここでの目的は、髪の表面にごく薄い膜を作り、湿気や風といった外部からの影響を受けにくくすることで、カットによって創られた髪型そのものを、優しく「保護する」という考え方です。
ノーセットのためのスプレー選び
この「保護する」という目的を達成するためには、どのような種類のヘアスプレーを選べば良いのでしょうか。大切なのは、強い固定力を持つ、いわゆる「ハードスプレー」は避けるということです。そうではなく、手ぐしが通るくらいの、ごく自然な仕上がりになる「ソフトタイプ」や「ナチュラル」と表記されたものを選ぶのが良いでしょう。また、髪に自然な艶を与える効果のあるスプレーも、髪を固めることなく、まとまりと清潔感を演出してくれるため、有効な選択肢となります。
自然に見せるための、上手な使い方
ヘアスプレーを、あくまで自然な仕上がりに見せるためには、その使い方にいくつかの簡単なこつがございます。最も重要なのは、スプレーと髪との「距離」です。必ず、ご自身の髪から最低でも20センチメートル以上は離して、スプレーが細かな霧状になって髪全体をふんわりと包み込むように使ってください。近い距離で噴射すると、一部分だけが固まってしまい、不自然な仕上がりになる原因となります。また、一箇所に集中してかけ続けるのではなく、スプレーを持つ手を常に動かしながら、髪全体に均一にかけることを心がけましょう。朝、お出かけになる前に、この方法で一度だけ、全体に薄くかけるだけで十分です。
スプレーの効果を最大限に引き出すカット
ここまでヘアスプレーの賢い使い方についてお話ししてまいりましたが、もし、そもそも髪がまとまりにくい形にカットされている場合、残念ながらスプレーの効果も半減してしまいます。お客様一人ひとりの髪の生え癖や骨格に合わせて、髪をただ乾かすだけで自然にまとまるようにカットが施されていれば、ごく少量のスプレーを使うだけで、驚くほど長時間、朝の美しい状態を保つことが可能になります。つまり、優れたカットは、ヘアスプレーのような補助的な道具の効果を、何倍にも高めてくれる、最も重要な土台となるのです。
理容室でのご相談が、一番の近道
ご自身の髪質にはどのような種類のスプレーが合うのか、あるいは、より効果的な使い方はないかといった細かな疑問は、やはり髪の専門家である理容師に直接ご相談いただくのが、最も確実な方法です。カットをさせていただく際に、「普段は整髪をしないのですが、崩れやすい日にはスプレーを少し使いたいです」とご相談いただければ、私たちはそれを前提とした、より崩れにくい髪型のご提案や、最適な製品に関する助言をさせていただくことができます。
賢いひと手間が、一日を変える
整髪をしない「ノーセット」の髪型を、一日を通して快適に保つために、ヘアスプレーを「保護膜」として賢く活用することは、非常に有効な選択肢です。しかし、その効果は、あくまでお客様の魅力を最大限に引き出すよう設計された、優れたカットがあってこそ、初めて真価を発揮します。お客様一人ひとりが、どのような天候の日でも自信を持って過ごせますよう、その土台となる髪作りから、日々の簡単な手入れの方法まで、私たちの誠実な技術と知識で、精一杯サポートさせていただきたいと願っております。