整髪しない日の新習慣。ヘアオイルだけで印象を上げる秘訣
「今日はしっかりと整髪をするほどではないけれど、何もしないで家を出るには髪のまとまりがなく、少し心もとない」と感じる日は、多くの男性にとって少なくないのではないでしょうか。ワックスなどでしっかりと形を作るのではなく、もっと手軽に、ごく自然なまとまりと清潔感を出したい。そんな思いに応える一つの選択肢として、整髪料の代わりに「ヘアオイルだけを使う」という考え方が注目されています。今回は、作り込みすぎない「ノーセット風」の髪を手軽に実現するための、オイルを使った簡単な習慣をご提案いたします。
なぜオイルだけを使うという選択なのか
ワックスやジェルとは異なり、ヘアオイルだけを使うことには、どのような利点があるのでしょうか。まず挙げられるのが、その「自然な艶感」です。人工的に作り込んだ光沢ではなく、まるで髪そのものが健康であるかのような、自然で上品な艶を演出することができます。また、多くのヘアオイルには髪を保湿する効果があり、日中の乾燥や静電気による広がりを抑え、髪を優しく保護してくれます。そして何より、手のひらに伸ばしてさっと髪になじませるだけで完了するという「手軽さ」は、忙しい朝において大きな魅力と言えるでしょう。
オイル選びと基本的な使い方
この「オイルだけ」という手軽な習慣を成功させるためには、いくつかの簡単なこつがあります。まずオイルは、髪のために作られた専用の「ヘアオイル」を選ぶのが最も良い選択です。比較的べたつきが少なく、髪になじみやすい製品から試してみるのが良いでしょう。そして最も大切なのが、使う量です。初めは「少し足りないかな」と感じるくらいの、ほんの数滴から試すようにしてください。つけすぎてしまうと、かえって清潔感を損なう原因にもなりかねません。
使い方の手順も非常に簡単です。まず、適量のオイルを両方の手のひら全体に、指の間まで薄く均一に伸ばします。そして、髪の根元や前髪からではなく、乾燥しやすい髪の内側や毛先から、優しくなじませていきます。最後に、手のひらに残ったごく僅かなオイルを使って、髪の表面や前髪の毛流れを軽く整えるように触れるだけで十分です。
失敗しないための大切な注意点
手軽なオイル仕上げですが、一つだけ注意すべき点があります。それは、先ほども触れた「つけすぎ」です。量が多すぎると、髪が濡れているように見えたり、洗っていないかのような印象を与えてしまったりすることがあります。これを防ぐためには、必ず少量から試し、ご自身の髪の長さや量に合った最適な量を見つけることが大切です。また、髪の根元部分につけると、髪が重さで潰れてしまい、せっかくのふんわり感が失われてしまうため、避けるようにしましょう。
オイルだけで美しく見せるための土台
ここまでオイルの使い方についてお話ししてまいりましたが、そもそも髪にダメージがあったり、カットの形が整っていなかったりすると、残念ながらオイルだけでは美しい仕上がりは望めません。ヘアオイルは、あくまでその髪が持つ「素材の良さ」を最大限に引き出すためのものです。そして、その大切な素材である髪そのものを整えるのが、私たち理容師によるカットの役割です。毛先が綺麗に整えられ、全体の量が適切に調整された髪は、ごく少量のオイルだけで、驚くほど自然にまとまり、美しい艶を放ちます。
髪の専門家だからできるご提案
お客様の髪質に本当に合ったオイルの種類や、お客様にとっての最適な量、より効果的な使い方など、髪の専門家である理容師だからこそできる、一人ひとりに合わせたご提案がございます。カットをさせていただく際に、お客様の普段の髪の整え方についてお聞かせいただくことで、日々の手入れがより簡単で、ご満足いただけるものになるようお手伝いをさせていただきます。
「何もしない」から「少しだけ手をかける」豊かさへ
「ノーセット」とは、必ずしも「完全に何もしないこと」だけを指すのではありません。ご自身の髪の状態と向き合い、オイル一滴という最小限の手間で、その日のご自身の印象を少しだけ良くする。それは、日々の暮らしを丁寧に、そして豊かに過ごそうとする、賢明な大人の男性の選択と言えるのではないでしょうか。お客様一人ひとりが、自分らしく快適な毎日を送れますよう、その土台となる髪作りを通して、誠心誠意お手伝いをさせていただきたいと願っております。

