直毛と絶壁、二つの個性を活かすメンズ髪型の考え方
さらりとした質感が魅力である「直毛」の髪質と、後頭部の形が平坦に見える「絶壁」の骨格。この二つの個性を併せ持つことで、髪型に立体感を出すのが非常に難しいと感じ、長年お悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。髪に動きが出にくく、骨格の印象を直接的に反映してしまいがちなため、理想の髪型を半ば諦めてしまっているかもしれません。しかし、そのお悩みは、直毛の特性を深く理解した、極めて緻密なカット技術によって、見事に解消することが可能です。
直毛の髪質だからこそ、カットの設計が全てを決める
ウェーブや癖のある髪質は、その髪自体が持つ動きによって、ある程度の立体感を補ってくれます。一方で、直毛の髪は、その素直な性質ゆえに、カットの設計が、完成する髪型のシルエットを百パーセント決定づけると言っても過言ではありません。しかし、それは決して弱点ではありません。むしろ、ごまかしが一切きかないからこそ、ミリ単位で計算されたカットを施すことで、他の髪質では表現できないほど、洗練された美しいシルエットを創り上げることができるのです。
自然な立体感を生む、緻密なカット設計
直毛の髪で、後頭部に柔らかな丸みを創り出すためには、三次元的な視点に基づいた、非常に繊細なカット設計が求められます。まず、美しいシルエットの土台として、襟足の部分をすっきりと、しかし自然に馴染むように引き締めます。この引き締まった部分があるからこそ、その上にある後頭部に視覚的な奥行きが生まれます。そして最も重要なのが、後頭部の髪の内側に、外からは見えないような、ごく僅かで緻密な段差(レイヤー)を設けることです。この内側の短い髪が、まるで建築物の骨組みのように、表面にある長い髪を優しく支え、髪の内側からふんわりとした、人工的ではない自然な丸みを生み出してくれるのです。
髪質という個性を、技術で乗り越える
「自分の髪質では、理想の髪型は無理だ」と、思われる必要は全くありません。私たち髪の専門家は、それを「制約」とは考えません。むしろ、技術を駆使して乗り越えるべき、やりがいのある「個性」と捉えています。お客様一人ひとりの骨格と、一本一本の髪の生え方を正確に見極め、その方のためだけに最高の設計図を描くこと。それこそが、誠実な理容師の仕事の醍醐味です。もちろん、日々の手入れをより簡単にするために、部分的にパーマをかけるという選択肢もございますが、それも全ては、完璧なカットという土台があって初めて活きてくるのです。
お客様の髪質と骨格に、誠実に向き合う時間
私たちは、施術に入る前に、お客様のお悩みを深くお伺いし、お客様の髪質と骨格をプロの目で正確に診断する時間を、何よりも大切にしています。そして、どのようなカットを、どのような意図で施すことによって、お悩みがどのように解消されるのかを、鏡の前で丁寧にご説明いたします。お客様が心からご納得し、信頼してくださること。その誠実な対話のプロセスこそが、最高の髪型を創り出すための、最も重要な要素であると信じております。
最後に
これまで、ご自身の直毛の髪質と絶壁の骨格を、悩みの種として捉えてこられたかもしれません。しかし、適切な知識と技術を持つ専門家にとっては、皆様の髪質と骨格は、その技術の真価を発揮できる、かけがえのない個性です。髪型一つで、横顔への自信が生まれ、日々の生活がより前向きなものになる。その素晴らしい体験の第一歩を、ぜひ私たちにお手伝いさせていただけましたら幸いです。

