「整髪料」と「ヘアオイル」の違いとは?それぞれの役割と効果的な使い方
毎日の髪のお手入れや、髪型を整える場面において、「整髪料」と「ヘアオイル」、この二つの言葉を耳にされる機会は非常に多いことと存じます。どちらも、私たちの髪をより良く見せるための大切な道具であることに違いはございませんが、実は、その本来の目的も、髪に与える効果も、全く異なる個性を持った、似て非なる存在なのです。「自分のなりたい髪型には、一体どちらを使えば良いのだろうか」「もしかして、両方を一緒に使った方が、より良い仕上がりになるのだろうか」。この記事では、そうした皆様が抱える素朴な疑問にお答えするため、「整髪料」と「ヘアオイル」が持つ根本的な違いと、それぞれの能力を最大限に引き出すための正しい使い方、そして両者を巧みに組み合わせる専門的な技術について、詳しく解説してまいります。
役割の明確な違い、「形を作る」か、「質感を高める」か
まず、この二つの道具が持つ、最も本質的な役割の違いについてご説明いたします。
「整髪料(ワックスやジェルなど)」の役割は『造形』
皆様が一般的に「整髪料」と聞いて思い浮かべるであろう、ヘアワックスやヘアジェルといった製品の主な目的は、髪に動きや束感を与えたり、根元から力強く立ち上げたり、あるいはきっちりと固めたりと、髪の「形」そのものを、ご自身の意のままにデザインすることにあります。それは、まるで粘土を使って彫刻を作り上げるように、ご自身の髪に、具体的なシルエットを与えるための、いわば「造形」のための道具なのです。
「ヘアオイル」の役割は『質感向上』
一方で、ヘアオイルの主な目的は、髪そのものが持つ「質感」を、より高いレベルへと引き上げることにあります。髪のパサつきを抑え、豊かな潤いと、品の良い自然な艶を与え、驚くほど滑らかな指通りを実現します。これは、完成した彫刻の表面を、最後の仕上げとして丁寧に磨き上げ、美しい光沢を与える作業によく似ています。
このように、その目的が「髪の形を作る」ことなのか、それとも「髪の質感を高める」ことなのか、という点で、両者は根本的に異なる役割を担っているのです。
それぞれが持つ、得意なことと個性
その役割の違いは、製品が持つ具体的な特徴にもはっきりと表れています。ヘアワックスやヘアジェルといった整髪料は、強いセットする力や、作った髪型を一日中維持する力を持ち、立体的な髪型や、きっちりとした髪型を作ること、そのものが得意分野です。対して、ヘアオイルは、髪型を作るほどのセットする力は、ほとんど持っておりません。その代わりとして、最高の艶とまとまり、そしてサラサラとした極上の指通りを実現し、同時に、髪のダメージを補修したり、日中の乾燥や熱から髪を守ったりするという、「髪のお手入れ」という側面を、非常に強く持っているのです。
どちらを選ぶべきか?目的別の使い分け
それでは、ご自身の目的に応じて、どちらを選ぶべきなのでしょうか。もし、あなたが髪に「形」や「動き」をはっきりと与えたいのであれば、例えば、短い髪を立ち上げたい、毛束を作って遊びたい、一日中髪型を崩したくない、といった明確な「造形」の目的をお持ちの場合は、迷わずヘアワックスやヘアジェルなどの「整髪料」をお選びください。一方で、強いセットする力は特に必要なく、主に髪の広がりを抑えたい、パサつきをなくして艶を出したい、あるいは指通りを良くしたい、といった「質感の向上」が一番の目的であれば、「ヘアオイル」が、あなたにとっての最適解となります。
【応用編】整髪料とヘアオイルを「組み合わせる」技術
実は、この二つの道具は、時には巧みに組み合わせることで、それぞれを単体で使う以上の、非常に高い次元の仕上がりを実現することが可能です。その際の基本的な順番は、「オイルが先、整髪料が後」と覚えてください。お風呂上がりのタオルで乾かした後の半乾きの髪に、まずヘアオイルをなじませ、ドライヤーで完全に乾かします。これにより、髪は最高のコンディション、すなわち、整髪がしやすい、しなやかでまとまりのある状態になります。その後、完全に乾いた髪に、ヘアワックスなどの整髪料をつけて、具体的な形を仕上げていくのです。また、手のひらに取ったワックスに、ほんの数滴のヘアオイルを混ぜてから使う、という上級者向けの技術もございます。
役割の違いを知り、髪型を自在にデザインする
「整髪料」と「ヘアオイル」は、どちらが優れている、というものでは決してございません。それぞれに、代わりの効かない、髪型作りにおける大切な役割を持った道具なのです。「形を作る」整髪料と、「質感を高める」ヘアオイル。この二つの明確な違いを正しくご理解いただき、時には使い分け、そして時には組み合わせることで、あなたの髪型作りの可能性は、これから無限に広がっていくことでしょう。