「ハード」な整髪料を使いこなす、崩れない髪型を作るための選び方と使い方
ご自身の髪型を整える上で、多くの男性が整髪料に求める性能の一つ、それは、丹精込めて作り上げた髪型を、一日を通して力強く維持してくれる「ハード」なセットする力ではないでしょうか。朝、鏡の前で完璧に仕上げたはずの髪型が、午後にはもう力なく崩れてしまっている。そんなご経験は、誰にとっても決して気分の良いものではございません。しかし、その頼もしい「ハード」な整髪料も、一歩その使い方を間違えてしまうと、ただ不自然に固まっただけの髪型になったり、あるいは整髪料の重さでかえって髪が潰れてしまったりする、非常に繊細な取り扱いが求められる道具でもあるのです。この記事では、ハードな整髪料が持つ真価を引き出し、力強さとしなやかさを両立した、一日中崩れることのない髪型を作るための、専門的な選び方と使い方について、詳しく解説してまいります。
なぜ、「ハード」な整髪料が必要とされるのか
そもそも、なぜ私たちは「ハード」な整髪料を必要とするのでしょうか。その理由は、ご自身の髪質が持つお悩みや、実現したい髪型の特性にあります。例えば、髪が硬く、セットをしてもすぐに元の状態に戻ろうとする力が強い「剛毛」の方や、逆に髪にハリがなく、作った形を維持することが難しい「軟毛」の方の髪を、意のままに操るためには、やはり力強いセットする力が必要となります。また、髪を根元からしっかりと立ち上げたり、シャープな毛束を作ったりといった、重力に逆らう立体的な髪型を、長時間にわたって維持するためにも、ハードな整髪料の力は不可欠です。
「ハード」を冠する、代表的な整髪料の種類
一言に「ハード」といっても、その性質によっていくつかの代表的な種類がございます。
ハードワックス
最も代表的で、汎用性の高い存在がハードワックスです。強いセットする力を持ちながらも、ある程度の再整髪が可能な柔軟性を併せ持っているのが特徴です。立体的な動きや、無造作な束感を作るのに最も適しています。
ハードジェル
ハードワックスよりもさらに固定する力が高く、髪を濡れたような質感でパリッと固めるのが特徴です。一度固まってしまえば、汗や湿気にも強く、ほとんど崩れることがありませんが、一度固めた後の手直しは難しくなります。
ハードスプレー
髪型作りの最終工程で、その完成形を完璧な状態で維持するための、「仕上げ」を専門とする整髪料です。ヘアワックスなどで作った形を、湿気や風といった外部の刺激から守る、薄い膜で髪全体を覆う役割を果たします。
髪質に合わせた「ハード」な整髪料の選び方
ご自身の髪質によって、最適な「ハード」な整髪料は異なってまいります。髪が硬く、太い方は、髪自体の力に負けない、非常に強いセットする力が必要です。ハードワックスの中でも、特に乾いた質感で固定力の高いクレイタイプのものや、ヘアジェルなどが適しています。一方で、髪が細く、柔らかい方は、強いセットする力は必要ですが、同時に「重さ」は禁物です。油分が少なく、軽い質感のハードワックスを選び、重さで髪が潰れてしまわないように注意が必要です。このような髪質の方には、仕上げにハードスプレーを使い、根元の立ち上がりを外側から支えてあげる方法が、非常に有効となります。
ハードな整髪料を「自然に」見せる、プロの使い方
ハードな整髪料を使う際に最も避けたいのが、固めすぎ、あるいは、つけすぎによる不自然な仕上がりです。それを防ぐための最も重要なこつは、整髪料をつける前の、ドライヤーによる下準備にございます。どんなにハードな整髪料も、しっかりとした土台がなければ、その力は半減してしまいます。髪を乾かす際に、ご自身が作りたい髪型のシルエットを、ドライヤーの熱を使って8割方作っておくこと。この工程が、最終的な仕上がりの自然さと、一日を通しての維持する力を大きく左右します。そして、整髪料は、つけすぎないことが絶対のルールです。小豆一粒くらいの量から始め、手のひらと指の間に、透明になるまで徹底的に伸ばしてから、髪の根元は避け、中間から毛先を中心になじませていくのが、プロが実践する基本の手順です。
力強さを、洗練された技術で操る
「ハード」な整髪料は、あなたの髪のお悩みを解決し、理想の髪型を一日中維持してくれる、非常に頼もしい味方です。しかし、その力をただ闇雲に振り回すのではなく、ドライヤーでの丁寧な下準備と、つけすぎない繊細な使い方という「技術」をもって初めて、その真価は発揮され、力強さとしなやかさを両立した、洗練された大人の髪型が完成するのです。もし、ご自身の髪質と理想の髪型に、本当に合った「ハード」な整髪料の選び方、そしてそれを完璧に使いこなすための専門的な助言が必要でしたら、ぜひ一度、私たち髪の専門家である理容師にご相談ください。