髪の根元から力強く立ち上げる、ボリューム感を一日中維持するための整髪術
ご自身の髪型を整える際、髪のトップにふんわりとした自然な立ち上がりがあると、それだけで髪型全体が立体的に見え、若々しく、そして自信に満ちた精悍な印象を周囲に与えることができます。しかしその一方で、「ドライヤーでいくら頑張って根元を立ち上げようとしても、時間が経つとすぐに髪が寝てしまう」「整髪料をつけると、かえってその重さで髪が潰れてしまう」といった、髪の立ち上げに関する根深いお悩みをお持ちの男性は、非常に多くいらっしゃいます。髪の根元からの美しい立ち上がりは、単にセットする力の強い整髪料を選べば良いというわけではなく、実は「熱の使い方」と「整髪料のつけ方」に、専門的な秘訣が隠されているのです。この記事では、まるで髪が無重力になったかのように、根元から軽やかに、そして力強く髪を立ち上げるための、プロの技術について詳しく解説してまいります。
なぜ、髪は思い通りに立ち上がらないのか
そもそも、なぜ私たちの髪は、思い通りに立ち上がってくれないのでしょうか。その原因は、ご自身の髪が持つ性質にあります。多くの方の髪は、それぞれ特定の方向に向かって生えており(これを毛流といいます)、この自然な流れに逆らって髪を立ち上げるためには、相応の技術が必要となります。また、髪が細く柔らかい髪質の方は、形を維持する力そのものが弱く、逆に髪が太く硬い髪質の方は、元に戻ろうとする力が強いために、どちらの場合も立ち上げた髪が寝てしまいやすい、という側面がございます。
すべての土台を作る、ドライヤーによる「根元の起こし方」
髪を根元から立ち上げるための工程の中で、最も重要といえるのが、整髪料をつける前の、ドライヤーによる下準備です。この段階で、立ち上がりの成否の八割が決まるといっても過言ではございません。その最大のこつは、髪を乾かす際に、毛先ではなく、まず「根元」を完全に乾かすことに意識を集中させることです。そして、立ち上げたい部分の髪を、本来生えている方向とは逆の方向に指で優しく引っ張りながら、その「根元」にドライヤーの温風をしっかりと当ててください。髪は、熱によって柔らかくなり、そして冷める瞬間にその形が記憶される、という性質を持っています。この「温めて、形を作り、そして冷ます」という一連の流れを丁寧に行うことで、髪の根元に上向きの癖をつけ、力強い立ち上がりの土台を作ることができるのです。
髪を立ち上げるための整髪料の選び方
ドライヤーで頑丈な土台を作り終えたら、次はその立ち上がりを一日中支え、維持するための整髪料を選びます。立ち上げた髪を維持するためには、当然ながら強いセットする力が必要となりますが、同時に、整髪料そのものの重さで髪を潰してしまっては本末転倒です。したがって、ここで求められるのは、「セットする力が強く、かつ、できるだけ軽い質感」の整髪料ということになります。その条件に最も合致する整髪料の種類の一つが、「クレイワックス」や「マットワックス」です。これらのワックスは、油分が少なく乾いた質感が特徴で、強いセットする力を持ちながらも非常に軽く、立ち上げを重視する髪型との相性が抜群です。
整髪料を使った、立ち上がりの「仕上げ方」
整髪料を使って仕上げる際の目的は、ドライヤーで作った立ち上がりを「補強し、維持する」ことです。ここでも、整髪料の重みで根元が潰れてしまうことを避けるため、ワックスをごく少量を指先に伸ばし、髪の中間から毛先にかけて、下から上へと優しく持ち上げるようになじませていくのが基本です。髪の根元には直接つけず、ドライヤーで作った立ち上がりを活かすことを意識してください。そして、仕上げにハードタイプのヘアスプレーをお使いになる場合は、立ち上げたい部分の髪を少し持ち上げ、その内側にある根元に向かって、少し離れた位置から「シュッ」と短く吹きかけます。これにより、まるで髪の内側に見えない支柱を作るように、根元の立ち上がりをより強力に、そして長時間にわたって支えることが可能になります。
根元を制する者が、ボリュームを制する
髪の根元からの美しい立ち上がりは、整髪料の力だけに頼るのではなく、日々のドライヤーによる丁寧な土台作りと、それを支えるための適切な整髪料選び、そして的確なつけ方、この三つが組み合わさって初めて実現される、いわば高度な技術の結晶です。これまで髪がぺたんこになることに悩んでいらっしゃった方も、まずは髪を乾かすという毎日の習慣を少し見直すだけで、そのお悩みは大きく改善される可能性を秘めています。もし、ご自身の髪質に最適な立ち上げ方や、それを実現するための具体的な整髪料について、より専門的な助言が必要でしたら、ぜひ一度、私たち髪の専門家である理容師にご相談ください。お客様一人ひとりの髪の生え癖や骨格を見極め、最高の立ち上がりを実現するためのお手伝いをさせていただきます。