ジェルの「パキパキ」感を操る。あえて創る方法と、防ぐための全知識
ヘアジェルを使ってスタイリングした髪が、まるで乾いた落ち葉のように「パキパキ」になってしまった。そんなご経験はございませんでしょうか。この、触ると硬く、少し動かすと白い粉が出てきそうな脆い質感は、ヘアジェルが持つ特徴的な仕上がりの一つですが、多くの方にとっては、できれば避けたい不自然さの象徴かもしれません。
しかし、この「パキパキ感」は、ある種のスタイルにとっては意図的に創り出すべき理想の質感であり、また、いくつかの簡単な知識とテクニックを知ることで、自在に回避することも可能です。
この記事では、ジェルスタイリングにおける「パキパキ感」を、皆様が自由にコントロールするための、プロフェッショナルな知識と考え方について、詳しく解説いたします。
なぜジェルは「パキパキ」になるのか
まず、この現象がなぜ起こるのかを理解しておきましょう。ジェルが「パキパキ」になるのは、製品に含まれるセット成分(ポリマー)が、水分が蒸発する過程で、髪の表面に非常に硬く、そして脆い皮膜を形成するためです。この皮膜が厚く、そして柔軟性がないほど、「パキパキ」とした感触は強くなります。また、この硬い皮膜が、髪を動かした際などに細かく砕けることで、白い粉(フレーキング)が発生する原因ともなります。
目的から考える:「パキパキ」に固めたい場合のテクニック
多くの場合、避けられがちなこの質感ですが、重力に逆らうような極端なヘアスタイルや、絶対に微動だにしたくないアート的なスタイルを創る際には、あえてこの「パキパキ感」が求められることもあります。
その目的を達成するためには、まず製品選びの段階で「スーパーハード」や「フリーズ」といった、最もセット力の高いジェルを選ぶことが重要です。そして、髪に塗布する際は、少し多めの量を使い、ドライヤーの冷風などを当てて、急速に、そして完全に乾燥させます。水分を素早く飛ばすことで、より硬く、より脆い、究極の固定力が生まれます。
柔軟性を求める:「パキパキ」を防ぐためのテクニック
一方で、ほとんどの方が目指すであろう、「セット力は欲しいが、パキパキはさせたくない」という、柔軟なスタイルを創るためのテクニックです。
製品選びを見直す
最も簡単な方法は、製品そのものを見直すことです。「ソフトタイプ」のジェルや、クリームやワックスの要素が加わった「ジェルクリーム」などは、配合されているセット成分がより柔軟な皮膜を形成するため、パキパキになりにくい性質を持っています。
使用量を減らす
パキパキ感は、形成される皮膜の厚さに比例します。つまり、使用するジェルの量を、スタイルを維持できる必要最小限に抑えることで、硬質な質感を大幅に和らげることができます。
水分量を調整する
髪がしっとりと濡れている状態でジェルを付けたり、手のひらでジェルを伸ばす際に、数滴の水を混ぜたりすることで、セット成分が薄まり、よりしなやかな皮膜が形成され、パキパキ感を防ぐことができます。
プロの裏技:一度「パキパキ」にしてから、ほぐす
そして、プロが実践する、最も効果的で、最も美しい仕上がりを実現する裏技が、「一度完全に乾かしてパキパキの状態を創り、その後、その硬さを優しくほぐす」という方法です。
ジェルが完全に乾ききった髪を、手のひらでくしゃっと優しく握り込むように、あるいは指の腹で根元を軽くゆするようにして、意図的に硬い皮膜を崩します。すると、あれほど硬質だった髪が、セット力や束感は維持されたまま、指が通るほどの柔らかさと自然な質感を取り戻すのです。これは、スタイルを完璧に固定し、なおかつ自然に見せるための、非常に高度なテクニックです。
「パキパキ」という質感は、もはやジェルの宿命ではありません。それを創り出すも、防ぐも、あなたの技術次第です。ご自身の理想のスタイルに合わせて、ぜひその質感を操ってみてください。より専門的な製品選びや、あなたの髪質に合わせたテクニックについてお知りになりたい場合は、どうぞお気軽にサロンのスタイリストにご相談ください。