ヘアジェルの正しい「順番」。プロが実践するスタイリングの全工程
たとえ最高品質のヘアジェルを手に入れたとしても、それを使う「順番」を間違えてしまうと、その性能を十分に引き出すことはできません。「ドライヤーはいつ使えば良いのだろうか」「髪はどのくらい濡れているのが正解なのか」といったスタイリングの工程に関する疑問は、多くの方が一度は抱くものです。
実は、プロフェッショナルなヘアスタイリングには、美しい仕上がりを約束するための、明確で論理的な「順番」が存在します。それは決して難しいものではなく、一度理解すれば、どなたでもご自身のスタイリングに応用することが可能です。
この記事では、皆様のジェルスタイリングを格段にレベルアップさせる、準備から仕上げまでの正しい全工程を、その理由と共に詳しく解説いたします。
工程一:リセットのための「ウェット」
まず、どのようなヘアセットにおいても、全ての工程は「髪を濡らす」ことから始まります。これが、スタイリングにおける最初の、そして最も重要な「順番」です。朝起きたままの乾いた髪には、睡眠中の寝癖や、ご自身の本来の生えグセが強く残っています。この状態の上からジェルを付けても、髪は言うことを聞かず、意図しない方向に跳ねてしまいます。
まずはシャワーを浴びるか、スプレーボトルなどで髪の根元から毛先までを均一に、そして十分に濡らし、髪を一度「素の状態」へとリセットしてあげましょう。これが、美しいスタイリングを実現するための揺るぎない土台となります。
工程二:下準備としての「タオルドライ」
髪をリセットしたら、次の順番は「タオルドライ」です。濡れた髪をそのままにしておくと、水分でジェルが薄まりすぎてしまい、本来のセット力が発揮されません。かといって、ゴシゴシと強く擦って拭いてしまうと、髪のキューティクルを傷つけ、ダメージの原因となります。
ここでは、タオルで髪を優しく挟み込み、頭皮の水分を吸収させるように、ぽんぽんと軽く叩きながら水分を取り除いてください。髪から水滴が落ちない程度、触るとしっとりとした湿り気を感じるくらいの「半乾き」の状態が、次の工程へと進むための最適な水分量です。
工程三:形を作る「ドライヤー」
多くの方が誤解しがちなのが、この「ドライヤー」の順番です。ジェルを付けた後にドライヤーで乾かすのではなく、「ジェルを付ける前に、ドライヤーでスタイルの骨格を創る」のがプロの常識です。
スタイルの命であるボリューム感や、全体の毛流れといったシルエットは、ジェルではなく、このドライヤーの熱と風によって創り上げます。ボリュームを出したいトップは根元を下から持ち上げるように、膨らみを抑えたいサイドは上から手で押さえながら、それぞれ乾かしていきます。この段階で、完成形の約8割を創り上げてしまう意識が重要です。ジェルは、ここで創った形を「維持・強調する」ための仕上げ剤なのです。
工程四:仕上げとしての「ジェル塗布」
ドライヤーでスタイルの土台が完成したら、いよいよ「ジェル」の出番です。適量を手に取り、手のひらから指の間まで均一に伸ばした後、ドライヤーで創ったシルエットを壊さないように、髪の内側から手を入れるようにして、全体に素早く馴染ませていきます。根元を避けて中間から毛先を中心に付けることで、ドライヤーで作ったボリューム感を損なうことなく、スタイルにツヤと束感、そして強力なキープ力を与えることができます。
工程五:最終調整「ディテールセット」
ジェルが全体に馴染んだら、完全に硬化する前の短い時間を利用して、スタイルの「最終調整」を行います。指先で毛束をつまんで動きを出したり、コームで分け目を整えたりと、細部をここで完璧に仕上げます。全体のシルエットを鏡で確認し、理想の形が完成したら、あとは自然に乾燥させてスタイルを完全に固定させます。
この「ウェット」「タオルドライ」「ドライヤー」「ジェル」「最終調整」という正しい順番を守ることが、ジェルスタイリングをマスターするための最も確実な方法です。このプロの工程をぜひ日々のスタイリングに取り入れて、ワンランク上の仕上がりを手に入れてみてはいかがでしょうか。