「ロン毛」のスタイリングにジェルを。硬めすぎずに操るプロの技
昨今のメンズヘアにおいて、長めのレングス、いわゆる「ロングヘア」は、大人の色気や個性を表現するスタイルとして確固たる地位を築いています。しかし、その一方で、髪が長くなるほどに日々のスタイリングが難しくなり、まとまりのなさや扱いにくさにお悩みの方も少なくないのではないでしょうか。
そして、スタイリング剤を選ぶ段階で多くの方が、「ヘアジェルは短い髪に使うもの」という固定観念から、選択肢から外してしまいがちです。
しかし、それは非常にもったいない誤解です。実は、使い方を正しく理解すれば、ヘアジェルはロン毛のスタイリングにおいて、他のスタイリング剤では代用できない、非常に優れた効果を発揮するのです。この記事では、ロン毛の方がジェルを味方につけ、ヘアスタイルを格上げするためのプロフェッショナルなテクニックを詳しく解説いたします。
ロン毛におけるジェルの役割:「全体」ではなく「部分的」に使う
まず、最も重要な心構えとして、ロン毛にジェルを使う際は、ショートヘアのように髪全体を固めるという考え方を一度リセットすることが必要です。ロン毛におけるジェルの役割は、スタイル全体を固定することではなく、その強力なセット力を活かして、スタイルの特定の部分を「部分的」かつ「的確」にコントロールすることにあります。
例えば、顔周りのうねりや、襟足の浮きやすい部分をピンポイントで抑える。あるいは、まとめ髪をする際に、生え際の後れ毛を完璧に抑えて、非常にクリーンなシルエットを作り上げる。このように、ジェルを「面」ではなく「線」や「点」で使う意識を持つことで、スタイルの完成度は劇的に向上します。
ジェルを活かすロン毛の代表的なスタイリング
この「部分的に使う」というテクニックは、様々なロン毛スタイルに応用が可能です。
ウェットな質感のダウンスタイル
トレンドのウェットな質感を表現したい場合、ジェルは最高のパートナーとなります。この時、髪全体にジェルを馴染ませるのではなく、まず手のひらに伸ばしたジェルに少量の水を混ぜて少しだけ粘度を緩めます。そして、髪の表面や毛先を中心に、手ぐしを通すように薄く馴染ませるのがコツです。これにより、髪が硬くならずに、自然で潤いのある濡れ感を一日中キープすることができます。
タイトなまとめ髪スタイル
ポニーテールやお団子といったまとめ髪スタイルにおいて、ジェルのセット力は真価を発揮します。髪を結ぶ前に、生え際やサイド、襟足といった、全体のシルエットに影響する部分にジェルを薄く馴染ませることで、一切の後れ毛や乱れのない、非常にシャープで洗練されたまとめ髪が完成します。フォーマルな場面でも通用する、品格のあるスタイルです。
センターパートやかきあげスタイル
前髪や分け目を主役にするスタイルでは、ジェルがそのディテールを際立たせます。指先にほんの少量のジェルを取り、分け目の根元部分や、かきあげた前髪の生え際にだけ、ピンポイントで付けることで、スタイルの崩れを防ぎ、シャープな印象を加えてくれます。全体のナチュラルな質感はそのままに、締めたい部分だけを締める、という上級者のスタイリングが可能になります。
失敗しないための正しい付け方と注意点
ロン毛にジェルを使う際の鉄則は、とにかく「ごく少量」から始めることです。まずはパール一粒大ほどの量を手のひらに取り、指の間まで含めて、完全に透明になるまで伸ばしてから、必要な箇所にだけ的確に塗布してください。特にダウンスタイルで髪全体に質感を加えたい場合でも、根元や頭皮にジェルが付くと、不自然な仕上がりやボリュームダウンの原因になるため、中間から毛先を中心に付けることを心がけましょう。
「ジェルはショートヘアのもの」という思い込みを一度捨て、その特性を正しく理解すれば、あなたのロン毛スタイルはより自由で、より洗練されたものになるはずです。ご自身の髪質や理想のスタイルに合わせた、より具体的なジェルの使い方についてお知りになりたい場合は、ぜひお気軽にサロンのスタイリストにご相談ください。