ワックスを「揉み込む」とは?プロが教えるスタイリングの基本技術
ヘアスタイリングの解説などで、しばしば登場する「ワックスを髪に揉み込む」という言葉。多くの方が、この「揉み込む」という行為を、なんとなく「髪にくしゃくしゃとつけること」と、曖昧に捉えているのではないでしょうか。しかし、実はこの技術こそが、ヘアスタイルに空気感と立体感を与え、プロのような洗練された質感を創り出すための、極めて重要な基本動作なのです。この記事では、「ワックスを揉み込む」という行為の本当の意味と、その正しいやり方について、詳しく解説いたします。
ワックスを「揉み込む」とは、どういう行為か
まず、「揉み込む」という行為の、基本的な定義を理解しましょう。これは、単にワックスを髪に塗り広げるのではなく、手のひらや指を使い、髪を優しく握ったり、あるいは髪の内側から空気を入れるように動かしたりしながら、ワックスを髪全体に均一に馴染ませていく、一連の動作のことを指します。髪を撫でつけたり、とかしたりするのとは対極にある、髪に立体感を与えるための、積極的なアプローチです。
なぜワックスは「揉み込む」ように馴染ませるのか
それではなぜ、ワックスはこの「揉み込む」という動作で、髪に馴染ませるのが良いのでしょうか。その理由は、主に三つの効果を得るためです。
1.髪に「空気感」と「ボリューム」を与えるため
髪を下から上へと優しく握り込むようにしてワックスを馴染ませることで、髪と髪の間に空気が入り込み、スタイル全体がふんわりと、そして根元から立ち上がります。髪が細く、ボリュームが出にくい軟毛の方でも、この技術を使うことで、軽やかで立体感のあるスタイルを創り出すことが可能です。
2.髪の「内側」まで、均一にワックスを行き渡らせるため
髪の表面だけを撫でるようにワックスをつけても、スタイルを支えることはできません。「揉み込む」という動作は、髪の内側、根元に近い部分にまで、ワックスを均一に行き渡らせるための、最も効果的な方法です。髪を内側から支えることで、スタイルは一日中崩れにくくなります。
3.自然な「束感」や「動き」を創り出すため
髪を握り込むことで、自然な毛束が生まれやすくなります。また、パーマをかけた髪や、元々くせ毛の方の髪のカール感を、潰さずに美しく再現するためにも、この揉み込むというテクニックは不可欠です。
プロが実践する、正しい「揉み込み方」の全手順
それでは、プロが実践する、正しい「揉み込み方」の具体的な手順を見ていきましょう。
1.準備:ドライヤーで土台を創り、ワックスを完璧に伸ばす
まず、大前提として、ドライヤーでスタイルの土台を創り、髪を完全に乾かしておきます。そして、適量のワックスを、手のひら、指の間まで、完全に透明になるまで完璧に伸ばしてください。
2.髪の内側から、空気を入れるように
準備ができたら、髪の表面からではなく、髪の内側に下から手を入れ、後頭部やサイドから、根元近くにワックスを馴染ませていきます。指を開き、髪をワシャワシャと振るようにして、髪全体にワックスを均一に散らします。
3.毛先から根元に向かって、優しく握り込む
次に、髪の毛先から根元に向かって、手のひら全体で、優しく、そしてリズミカルに髪を握り込んでいきます。この「スクランチ」と呼ばれる動作を、髪全体に繰り返すことで、スタイルに空気感と自然な束感が生まれます。
4.指先でディテールを整えて、完成
最後に、全体のシルエットを手ぐしで整え、指先に残ったワックスで、前髪や表面の毛束をつまみ出し、スタイルを完成させます。
最高の「揉み込み」は、最高の「道具」から
これまで、「揉み込む」技術について解説してまいりましたが、この技術をさらに高いレベルで、そして簡単に行うためには、使用するワックス自体の品質も大きく影響してきます。
私達サロンで取り扱うプロフェッショナル仕様のスタイリング剤、いわゆる「サロン専売品」は、ベタつくことなく、驚くほど軽い使用感で、理想的な空気感と束感を創り出せるように、処方が徹底的に研究されています。
お客様の髪質とスタイルに最適な一品と、それを最大限に活かすためのプロの技術。その両方をご提供させていただくことこそ、私達の役割です。ぜひ一度、その違いをご体感ください。