ワックスが「水っぽい」のはなぜ?原因と正しい対処法
お使いのヘアワックスの蓋を開けた際に、表面に水分が浮いていたり、全体がドロドロとした「水っぽい」状態になってしまっていた、というご経験はございませんでしょうか。本来あるべき姿とは異なるその状態に、「これはまだ使えるのだろうか?」と、不安に感じてしまいますよね。実は、その現象は、ワックスが品質の劣化を知らせる、重要なサインなのです。この記事では、ワックスが水っぽくなってしまう原因と、その際の正しい対処法について詳しく解説いたします。
ワックスが「水っぽい」状態になる、その主な原因
ヘアワックスが、本来の質感から、水っぽい状態に変化してしまうのには、主に二つの原因が考えられます。
1.高温による成分の「分離」
最も多く見られる原因が、ワックスの保管場所の温度が高すぎることによる、成分の「分離」です。ヘアワックスは、ロウ成分やオイルといった油性の成分と、水分などが、乳化剤という成分によって均一に混ざり合った状態(エマルジョン)を保っています。しかし、夏場の車内や、直射日光が当たる窓際、暖房器具の近くといった高温の環境下に長時間置かれると、この乳化の状態が壊れてしまいます。熱によって溶け出したオイルや水分が、他の成分と分離して表面に浮き出てくることで、ワックスが「水っぽい」ように見えるのです。
2.時間経過による製品の「劣化」
もう一つの原因が、製品そのものの時間経過による「劣化」です。開封してから長期間が経過したり、保存状態が悪かったりすると、成分を均一に保っていた乳化剤の力が弱まり、自然と分離が始まってしまうことがあります。また、使用期限を大幅に過ぎた製品にも、同様の現象が見られることがあります。
「水っぽい」ワックスは、まだ使えるのか
それでは、一度水っぽくなってしまったワックスは、まだ使用しても良いのでしょうか。
基本的には、使用を推奨しません
結論から申し上げますと、一度成分が分離し、水っぽくなってしまったワックスの使用は、基本的には推奨できません。なぜなら、その状態のワックスは、本来の品質バランスが完全に崩れてしまっているからです。無理に使用しても、セット成分やオイル成分が均一に髪に付着せず、「セット力が極端に弱い」「部分的に異常にベタつく」といった、スタイリングの大きな失敗に繋がります。
使用を諦めるべき、明確なサイン
特に、水っぽい状態に加えて、購入時とは明らかに違う、古い油のような不快な匂いがする場合や、色が変色してしまっている場合は、製品の酸化が著しく進行している証拠です。髪や頭皮への負担となる可能性も否定できないため、その際は、潔く使用を諦め、新しいものに買い替えることを強くお勧めいたします。
製品の品質を守るための、正しい保存方法
こうした品質の劣化を防ぎ、お気に入りのワックスを最後まで良い状態で使い切るためには、日々の正しい保存方法が何よりも重要です。ヘアワックスの最適な保存場所は、「冷暗所」、すなわち、直射日光が当たらず、温度変化が少なく、湿度の低い、涼しい場所です。ご自身の部屋の棚や引き出しの中などが、最適な保存場所と言えるでしょう。使用後は必ずきちんと蓋を閉める、という基本的な習慣も、もちろん忘れてはなりません。
最高の品質は、最高の「安定性」から
これまで、ワックスが水っぽくなる原因について解説してまいりましたが、プロが使用する製品は、こうした品質の「安定性」という点においても、極めて高い基準で開発されています。
私達サロンで取り扱うプロフェッショナル仕様のスタイリング剤、いわゆる「サロン専売品」は、様々な環境下での使用を想定し、高品質で安定性の高い原料と、優れた乳化技術を用いて作られています。そのため、適切な環境で保存していただければ、簡単には成分が分離することなく、最後まで最高のパフォーマンスを発揮し続けてくれます。
製品の品質や、ご自身のスタイリング剤の状態にご不安がございましたら、どうぞお気軽に、髪の専門家である私達にご相談ください。