ワックスの正しい伸ばし方|仕上がりを劇的に変えるプロのひと手間
ご自宅でのヘアスタイリングが、なぜか上手くいかない。その原因は、もしかしたら、ワックスを髪につける前の、ほんの数秒間の「伸ばし方」にあるのかもしれません。ワックスを手のひらで伸ばすという行為は、多くの方が無意識に行っている、非常にシンプルな工程です。しかし、この工程を正しく、そして丁寧に行うかどうかが、プロとアマチュアの仕上がりを分ける、決定的な違いを生み出すのです。この記事では、ワックスの性能を100%引き出すための、正しい伸ばし方について、その理由と共に詳しく解説いたします。
なぜワックスは「伸ばす」必要があるのか
まず、なぜワックスを髪につける前に、手のひらで伸ばす必要があるのでしょうか。その理由は、大きく三つあります。
1.髪に均一に馴染ませるため
ワックスは、容器に入っている状態では、ある程度固まった半固形、あるいは固形の状態です。これをそのまま髪につけてしまうと、塊のまま髪に付着し、部分的にベタついたり、白くダマになったりする「ムラ」の原因となります。手のひらで均一に伸ばすことで、髪全体に薄く、そしてムラなくワックスを塗布することが可能になります。
2.ワックスの成分を「活性化」させるため
ワックスは、手のひらで擦り合わせる際の「摩擦熱」と「体温」によって温められることで、ロウ成分などが溶け、最もスタイリングに適した、滑らかなオイル状のテクスチャーに変化します。この「乳化」と呼ばれるプロセスを経ることで、ワックスが持つ本来のセット力や操作性が最大限に引き出され、成分が「活性化」するのです。
3.「つけすぎ」を防ぐため
ワックスを手のひら全体に薄く伸ばすことで、一度に髪につく量を適切にコントロールすることができます。結果として、スタイリング失敗の最大の原因である「つけすぎ」を、未然に防ぐことに繋がります。
プロが実践する、完璧なワックスの「伸ばし方」
それでは、プロが実践する、ワックスの性能を最大限に引き出すための、正しい伸ばし方の手順を見ていきましょう。
ステップ1:適量を手に取る
まず、基本となる「小豆一粒大」ほどの量を、指先や爪の裏側などを使って、清潔に手に取ります。
ステップ2:手のひら全体で、力強く擦り合わせる
ワックスを手のひらの中心に乗せ、両方の手のひらを使い、少し力が加わるくらいの感覚で、力強く擦り合わせます。この時、摩擦熱でワックスが温められ、徐々に溶けていくのを感じてください。
ステップ3:指の間、指先まで、完璧に伸ばす
手のひら全体にある程度ワックスが広がったら、次に、両手の指を組むようにして、指と指の間、そして一本一本の指の腹や側面まで、ワックスを完璧に行き渡らせます。実際に髪に触れて、束感などのディテールを創り出すのは、この「指」の部分です。ここにワックスがしっかりと伸びていることが、プロの仕上がりには不可欠です。
ゴール:「透明なオイル状」になるまで
ワックスの白い塊が完全に見えなくなり、手のひら全体が、まるで透明なハンドクリームを塗った後のように、均一なオイル状のツヤを帯びている状態。これが、完璧な伸ばし方ができたサインです。
最高の「伸ばし方」は、最高の「道具」から
これまでにご紹介した正しい伸ばし方を実践する上で、使用するワックス自体の品質も大きく影響してきます。
私達サロンで取り扱うプロフェッショナル仕様のスタイリング剤、いわゆる「サロン専売品」は、基材となる成分の質が非常に高く、処方が徹底的に研究されています。そのため、驚くほど少量でも、まるでシルクのように滑らかに伸び、簡単に完璧な乳化状態を創り出すことが可能です。
お客様の髪質とスタイルに最適な一品と、その場で実践しながらお伝えするプロの伸ばし方。その両方をご提供させていただくことこそ、私達の役割です。ぜひ一度、その違いをご体感ください。