【理容師直伝】洗髪でワックスが落ちない…その悩み、解決します。
毎日のスタイリングに欠かせない、ヘアワックス。思い通りのヘアスタイルを一日中キープしてくれる心強い味方ですが、その一方で、一日の終わりに髪を洗う際、その頑固なワックスがなかなか落ちずに苦労されている、という方は少なくないのではないでしょうか。
「シャンプーが全く泡立たない」「何度洗っても、べたつきや被膜感が残っている気がする」——そのお悩み、私たち理容師は非常によく理解できます。実は、油分を主成分とするヘアワックスをすっきりと洗い流すためには、いつもの洗髪にほんの少しの工夫と、プロならではのテクニックを取り入れる必要があるのです。今回は、お客様の髪と頭皮の健康を第一に考える私たち理容師の視点から、その具体的な方法を詳しく解説してまいります。
なぜワックスは簡単に落ちないのか
まずご理解いただきたいのは、ヘアワックスが「油性」の汚れであるという点です。汗や水で簡単に崩れてしまわないよう、ワックスは油分や樹脂成分で髪をコーティングするように作られています。そのため、水分を多く含むシャンプー剤をいきなり髪につけても、水と油が反発しあい、洗浄成分がワックスの芯まで浸透せずに、表面を滑るだけになってしまうのです。これが、シャンプーの泡立ちが悪く、洗浄効果が半減してしまう主な原因です。
実践①:シャンプー前の「予洗い」を徹底する
頑固なワックスを落とすための第一歩は、シャンプー剤を付ける前の「予洗い」を、いつも以上に丁寧に行うことです。38度前後の少しぬるいと感じるくらいのお湯で、最低でも1分から2分ほどの時間をかけ、指の腹で頭皮と髪を優しくマッサージするように、まんべんなく洗い流してください。この予洗いによって、ワックスが体温に近いお湯で温められて柔らかくなり、表面についた埃や汗と共に、ある程度の油分が洗い流されます。
実践②:プロの裏技「コンディショナー」で予洗いする
予洗いでもまだワックスが残っていると感じる場合、ここでプロの裏技をご紹介します。それは、シャンプーの前に、コンディショナーやトリートメントを髪に馴染ませるという方法です。「油は油で落とす」というクレンジングの基本原則を応用したもので、コンディショナーに含まれる油分が、ワックスの頑固な油分を浮かび上がらせ、非常に落ちやすい状態にしてくれるのです。コンディショナーをワックスが付着している部分に揉みこむようになじませ、少し時間を置いてから、シャワーで軽く洗い流してみてください。
実践③:「乳化」のひと手間で洗浄効果を最大に
予洗いやコンディショナーによる下準備を終えたら、いよいよシャンプーで洗っていきます。ここで意識していただきたいのが「乳化」という工程です。手のひらで泡立てたシャンプーを髪全体になじませたら、すぐにゴシゴシと洗うのではなく、まず手のひらに少量のお湯を取り、それを髪に加えながら、空気を含ませるように優しく揉みこんでみてください。すると、シャンプーとワックスの油分が混ざり合い、少し白く濁ったような状態になります。これが「乳化」のサインです。このひと手間を加えることで、洗浄成分が汚れの芯までしっかりと届き、驚くほど豊かな泡立ちと共に、ワックスを根本からすっきりと洗い流すことができます。
頑固な蓄積汚れは、サロンでのリセットを
今回ご紹介した方法を実践していただくことで、日々のワックス落としは格段に楽になるはずです。しかし、セルフケアだけでは落としきれずに、少しずつ髪や毛穴に蓄積されてしまう頑固な汚れもございます。
私たち理容師は、サロンでしか扱えない専用のクレンジング剤や、プロならではの技術を駆使して、お客様の髪と頭皮を、生まれたてのような「素」の状態へとリセットするお手伝いができます。もし、ご自身のセルフケアに限界を感じたり、最高の爽快感を体験してみたくなったりした際には、ぜひ一度、私たち専門家にご相談ください。お客様のスタイリングライフがより快適なものになるよう、誠実な技術でサポートさせていただきます。