そのタオルの使い方、大丈夫?理容師が語る、髪を守るための正しい洗髪後ケア
洗髪を終えた後、濡れた髪をタオルでどのように拭いていらっしゃいますでしょうか。「とにかく早く乾かしたいから、ゴシゴシと力強く擦っている」という方が、もしかすると大多数を占めるかもしれません。しかし、実はその何気ない習慣こそが、知らず知らずのうちに皆様の大切な髪と頭皮に深刻なダメージを与えている可能性があるのです。
洗髪後のタオルドライは、単に水分を拭き取るための作業ではありません。それは、シャンプー後の最も無防備でデリケートな状態にある髪と頭皮を、ダメージから優しく保護するための、極めて重要なケア工程なのです。お客様の髪の健康を第一に考える私たち理容師の視点から、見過ごされがちなタオルの正しい使い方と、選び方のポイントについて詳しく解説いたします。
なぜ力任せのタオルドライは危険なのか
濡れている時の髪は、乾いている時とは全く異なる性質を持っています。髪の表面は、うろこ状の「キューティクル」という組織で覆われており、これが髪内部の水分や栄養を守り、髪にツヤを与えています。しかし、髪が水分を含むと、このキューティクルは扉のように開いてしまい、非常に剥がれやすく、傷つきやすい無防備な状態になります。この状態でタオルでゴシゴシと力任せに擦るという行為は、開いたキューティクルを無理やり剥がしたり、ささくれ立たせたりするようなものです。これが、切れ毛や枝毛、髪のパサつきやツヤが失われる大きな原因となるのです。
プロが実践する正しいタオルドライの手順
では、どのように拭くのが正解なのでしょうか。ポイントは「擦る」のではなく「水分を吸収させる」という意識です。まず、清潔で乾いたタオルを頭全体にふわりとかぶせ、指の腹を使って頭皮を優しくマッサージするようにポンポンと押さえていきましょう。こうすることで、髪の根元や頭皮の水分を効率的に吸収させることができます。
次に、髪の中間から毛先にかけては、タオルで優しく挟み込み、パンパンと軽く叩くようにして水分をタオルに移し取ります。決して、髪を擦り合わせたり、雑巾のように捻って絞ったりすることのないよう、細心の注意を払ってください。
ドライヤー時間を短縮する「タオルターバン」
より効果的に水分を取り除き、ドライヤーによる熱ダメージを軽減するためには、タオルを二枚使った応用テクニックもお勧めです。まず一枚目のタオルで上記の手順通りに優しく水分を吸収させた後、乾いた二枚目のタオルで頭全体をターバンのように包み込みます。そして、スキンケアなどを行いながら数分間そのまま置くことで、残った水分がさらにタオルへと吸収され、ドライヤーを当てる時間を大幅に短縮することができます。
こだわりたい「タオルの選び方」
髪や頭皮への優しさを追求するならば、使用するタオルの素材にも少しだけこだわっていただきたいと存じます。マイクロファイバー素材に代表されるような、高い吸水性を持つタオルを選べば、擦らなくても効率的に水分を除去できるため、髪への負担を大きく減らすことができます。また、肌触りの観点からは、毛足が長く柔らかい綿(コットン)100%のタオルも、デリケートな頭皮への刺激が少なく、安心してお使いいただけます。そして何よりも、常に清潔で完全に乾いたタオルを使用することが、雑菌の繁殖を防ぎ、臭いや頭皮トラブルを予防するための基本中の基本です。
サロンでの丁寧なタオルドライ
私たち理容師がお客様の髪を扱う際、このタオルドライの一つひとつの動作には、細心の注意を払っております。お客様の髪質や長さに合わせてタオルの当て方や押さえる力の加減を微調整し、髪に一切の負担をかけることなく、しかし効率的に水分を除去する。このような細部へのこだわりと丁寧な仕事の積み重ねが、サロンで仕上げたスタイルの美しさと持続性、そしてお客様の髪の健康そのものを支えているのです。
タオルの使い方一つで、髪の未来は変わります
タオルドライという日常の些細な習慣を見直すこと。それが、5年後、10年後のご自身の健やかな髪を守るための、非常に重要な投資となります。私たちは、カットやスタイリングといった目に見える技術だけでなく、シャンプーやタオルドライといった、お客様の髪の健康の土台となる工程こそを大切にしています。ご自身のヘアケアに少しでもご不安があれば、どんな些細なことでもご相談ください。誠実にお応えさせていただきます。