【理容師が解説】理想的な洗髪の所要時間は?各工程にかけるべき時間とその理由
皆様は毎日の洗髪に、どれくらいの時間をかけていらっしゃいますでしょうか。「忙しいから数分で手早く済ませてしまう」という方もいれば、「念入りに洗っているつもりだけれど、果たして適切な時間がどれくらいなのか分からない」と感じている方もおられるかもしれません。
実は、髪と頭皮の健康を本当に考えるのであれば、洗髪の一連の流れ、その各工程ごとにかけるべき「適切な所要時間」の目安というものが存在します。今回は、お客様の髪に日々向き合う私たち理容師の視点から、理想的な洗髪の所要時間とその内訳、そして時間をかけることの本当の意味について、詳しく解説してまいります。
予洗い:最低でも1分以上はかけましょう
洗髪全体の効果を大きく左右するのが、シャンプー剤を付ける前の「予洗い」です。この工程には、ぜひ「1分から2分」の時間をかけていただきたいと存じます。これは単に髪を濡らすためではなく、38度前後のぬるま湯で頭皮そのものを指の腹で優しくマッサージしながら、毛穴を開かせ、汚れを浮き上がらせるための重要な時間です。この予洗いを丁寧に行うだけで、頭皮の汚れの約7割は落ちると言われており、その後のシャンプーの泡立ちと洗浄効果を格段に高めてくれます。
シャンプー(洗浄):1分〜2分で頭皮全体を
実際にシャンプー剤を使って頭皮を洗う時間は、「1分から2分」が目安となります。ここで大切なのは、時間をかけてゴシゴシと力任せに洗うことではなく、豊かな泡を使って、指の腹で頭皮全体を均一に、かつ優しくマッサージするように洗う「質」です。時間が短すぎると洗い残しの原因になりますが、逆に長すぎても頭皮に必要な潤いまで奪ってしまい、乾燥を招く可能性があります。適度な時間で、手際よく、しかし丁寧に頭皮全体を洗い上げることがポイントです。
すすぎ:洗浄時間の倍以上、2分〜3分は丁寧に
洗髪の全工程の中で、最も時間をかけるべきなのが、この「すすぎ」です。目安としては「2分から3分」、あるいは「シャンプーで洗っていた時間の倍以上」を意識してください。シャンプーの洗浄成分のすすぎ残しは、フケやかゆみ、肌荒れといった頭皮トラブルを引き起こす最大の原因の一つです。特に、泡が残りやすい生え際や耳の後ろ、襟足といった部分は、髪をかき分けてシャワーを直接頭皮に当てるように、念入りに洗い流しましょう。「もう十分すすげたかな」と感じてから、さらに30秒ほど追加ですすぐくらいの意識が理想的です。
乾燥:時間を置かず、5分〜10分で完全に
洗髪後は、タオルドライに1〜2分、その後ドライヤーを使って「5分から10分」程度で髪を完全に乾かしきるのが理想的な流れです。濡れた髪をタオルで包んだまま長時間放置したり、自然乾燥させたりすることは、雑菌の繁殖を招き、臭いや頭皮トラブルの原因となります。洗髪から乾燥までを一つのセットと考え、できるだけ時間を置かずに行うことが、清潔で健やかな頭皮環境を保つための秘訣です。
サロンでの洗髪に時間をかける理由
ご自宅での洗髪が全体で10分程度を目安とするのに対し、サロンでカットコースなどに含まれるシャンプーは、マッサージなども含めて10分から15分ほどのお時間をいただくことが多くございます。私たちがこの時間でお届けしているのは、単なる洗浄作業ではございません。お客様一人ひとりの頭皮の状態を指先で診断し、血行を促進するための最適なマッサージを行い、日常の喧騒を忘れて心からリラックスしていただくための、価値ある「時間」そのものです。
時間を意識することが、未来の髪への投資です
忙しい毎日の中では、洗髪の時間を短縮したくなるお気持ちもよく分かります。しかし、日々の洗髪で各工程の所要時間を少しだけ意識していただくことが、5年後、10年後のご自身の健やかな髪と頭皮への、何よりの投資となります。もし、ご自身のケア方法や時間の使い方が正しいかご不安な場合や、プロが時間をかけて行う本物のシャンプーを体験してみたくなった際は、ぜひ私たちにご相談ください。お客様からお預かりする大切なお時間を、最高の満足感でお返しすることをお約束いたします。