毛染めで、かけたはずのパーマが取れるのはなぜ?カールと髪色を両立させるプロの法則
時間も費用もかけて手に入れた、理想のパーマスタイル。その、計算され尽くした美しいカールや、柔らかなウェーブが、その後にヘアカラーをしたことによって、なぜか以前より弱くなったり、だれてしまったり。そんな、非常に残念で、どこか腑に落ちないご経験をされたことはございませんか。「おしゃれの幅を広げるために、パーマとヘアカラーの両方を楽しみたい」。その、ごく自然で、前向きな願いが、なぜこんなにも悲しい結果を招いてしまうことがあるのでしょうか。
この、一見すると不可解にも思える現象には、実は、あなたの髪の内部で起こっている、明確な化学的な理由が存在するのです。今回は、その原理を解き明かし、あなたの大切なパーマスタイルと、美しい髪色の、その両方を完璧な状態で守り抜くための、私達プロフェッショナルが遵守する「法則」について、詳しく解説してまいります。
なぜ、ヘアカラーはパーマの結合に影響を与えるのか
まず、なぜヘアカラーをすると、パーマが弱くなってしまうことがあるのか、その科学的なメカニズムについてご説明いたします。
パーマという技術は、薬剤の力を使って、髪の内部にある「タンパク質の結合」を、一度、意図的に切り離し、ロッドなどを巻いてカールやウェーブの形をつけた状態で、再び、別の薬剤で固定(再結合)させることで、その形を髪に記憶させる、という仕組みになっています。
一方で、皆様が楽しまれる一般的なヘアカラー(アルカリカラー)は、髪の内部に染料を浸透させるために、「アルカリ剤」という成分を含んでいます。このアルカリ剤には、髪の表面を覆うキューティクルを開くと同時に、髪そのものを柔らかく膨潤させる、という働きがございます。そして、このアルカリ剤が、パーマによって、かろうじて再結合されたばかりの、まだデリケートな状態にある髪の内部の結合の一部を、再び緩めてしまったり、あるいは部分的に切断してしまったりすることがあるのです。これこそが、ヘアカラーをした後に、パーマが弱まったり、「取れる」と感じたりする現象の、直接的な原因に他なりません。
パーマを守るための、施術の「順番」と「期間」
それでは、この、パーマが取れてしまうというリスクを、最小限に抑えるためには、どうすれば良いのでしょうか。そのための、最も重要で、かつ最も効果的な原則が、「施術を行う順番」を守る、ということです。
私達プロフェッショナルは、特別な理由がない限り、必ず「パーマを先に行い、その後にヘアカラーを行う」という順番を、鉄則としています。まずパーマをかけ、その美しいカールやウェーブを完璧に創り上げた上で、そのスタイルを壊さないように、後から色を乗せていく、という考え方です。
そして、その間には、パーマによって一度切り離され、再び繋がった髪の内部の結合が、空気中の酸素などに触れて、完全に安定するための、十分な「期間」を設けることが、理想的とされています。具体的には、パーマをかけてから、最低でも1週間、できれば2週間ほどのインターバルを空けていただくことで、その後のヘアカラー剤によるパーマへの影響を、最小限に抑えることが可能となります。
プロフェッショナルは、それでも「両立」を諦めない
この「カラーをすると、パーマが弱まる」という、化学的な宿命。私達プロは、それをただ、仕方のないこととして受け入れるだけではございません。その避けられないリスクを、専門的な知識と技術を駆使して、極限までゼロに近づける努力を、常に続けております。
例えば、お客様の髪の状態を正確に見極め、数あるカラー剤の中から、パーマへの影響が最も少ない、アルカリ度の低い薬剤を特別に選定したり、髪のpHを理想的な状態にコントロールする、専門的な処理剤を施術の途中で併用したりします。また、特にカールが強くかかっている毛先部分には、できるだけ薬剤が付着しないように、根元だけを染める「リタッチ」という技術を基本としたり、毛先に塗布する薬剤のパワーを、極限まで優しく調整したりといった、緻密な塗り分けの技術も駆使します。
最高のスタイルは、緻密な計画の上に成り立つ
ヘアカラーとパーマは、そのどちらもが、あなたの髪に大きな変化をもたらす、非常にパワフルな技術です。そして、その二つの強力な技術を、一つのヘアスタイルの中で美しく両立させるためには、二つの化学反応を深く理解した上での、極めて緻密な「施術計画」が、何よりも不可欠となります。
施術の順番、空けるべき期間、最適な薬剤の選定、そして、繊細な塗布技術。これらの全ての要素を、お客様一人ひとりの髪の状態に合わせて、完璧に最適化すること。それこそが、あなたの「どちらも諦めたくない」という、素晴らしい願いを、最高の形で叶えるための、唯一の方法なのです。その複雑な計画の立案と実行を、安心して任せられるパートナーとして、ぜひ私達のような専門家にご相談いただけますと幸いです。