ヘアカラーの前日・当日、髪は洗うべき?頭皮と髪色を守るための、プロからの答え
ヘアカラーの施術を予約された日の朝、鏡の前に立った時、「このままサロンに向かっても良いのだろうか。それとも、髪を綺麗に洗ってから行くべきだろうか」と、ふと悩んでしまったご経験はございませんか。「もし髪が汚れていたら、担当の理容師さんに失礼にあたるかもしれない」。そのように、私達専門家に対してお気遣いをいただき、ご来店前にシャンプーをされるお客様は、実は少なくありません。そのお心遣いに、まずは心から感謝を申し上げます。
しかし、誠に申し上げにくいのですが、実はそのお客様の優しいお気遣いが、かえってお客様ご自身のデリケートな頭皮や、当日の美しい髪色の仕上がりに、予期せぬ影響を与えてしまう可能性がございます。今回は、その理由と、私達プロフェッショナルが考える、最も理想的なご来店前の準備について、詳しくお伝えさせていただきます。
結論:カラー当日のシャンプーは「しない」が正解です
まず、皆様が最も知りたい結論から、明確にお伝えいたします。ヘアカラーをされる当日の朝は、シャンプーを「しない」でお越しいただくのが、最も正しく、そしてお客様ご自身にとって最善の選択です。これには、頭皮のメカニズムに基づいた、非常に重要な理由がございます。
その最大の理由は、頭皮を守るための「天然の保護膜」を、洗い流してしまわないためです。私達の頭皮からは、常に適度な皮脂が分泌されています。この皮脂が、頭皮の表面に目には見えない薄い膜(皮脂膜)を形成し、外部の様々な刺激からデリケートな地肌を守る、いわば「天然のバリア」として機能してくれています。ヘアカラー当日の朝にシャンプーをしてしまうと、この大切なバリア機能までが綺麗に洗い流されてしまいます。その結果、薬剤が頭皮に触れた際の刺激を、普段よりも強く、そしてダイレクトに感じやすくなってしまうのです。
「失礼かもしれない」というお気遣いは、ご不要です
「とは言え、汗をかいたり、少し汚れたりした髪のままでは、担当者に失礼ではないか」。そのようにご心配される、お客様の真面目で誠実なお人柄を、私達は深く理解しております。しかし、どうぞご安心ください。私達プロの理容師は、お客様の髪や頭皮の状態を、ありのままに見せていただくことが仕事です。多少の汗や皮脂があることは、むしろ健康な頭皮の証であり、それを不快に思うことは決してございません。
私達にとって何よりも大切なのは、お客様が施術中に、頭皮のヒリつきや不快感などを感じることなく、リラックスして快適な時間をお過ごしいただくことです。そのためにも、天然のバリアである皮脂膜は、ぜひ残したままの状態でお越しいただきたいのです。
では、整髪料などが付いている場合はどうすれば良いか
それでは、ワックスやヘアオイルといった整髪料が付いている場合は、どうすれば良いのでしょうか。少量で、軽い質感のものであれば、そのままご来店いただいて全く問題ございません。
ただし、多量のハードスプレーやジェルなどで、髪が固まってしまっているような場合は、カラー剤の均一な浸透を妨げてしまう可能性がございます。その際には、私達プロの判断で、カラーリングの前に一度シャンプー(プレシャンプー)をさせていただくことがございます。結果的に、当日はスタイリング剤も何もつけない「素の髪」の状態でご来店いただくのが、最もスムーズで理想的と言えるでしょう。
セルフカラーの場合も、考え方は同じです
この「施術直前のシャンプーは避ける」という原則は、ご自宅でご自身で染められる、セルフカラーの場合においても同様です。むしろ、ご自身で染める場合は、薬剤を頭皮に付けずに塗布することが非常に難しいため、皮脂によるバリア機能の重要性は、サロンでの施術以上に高まると言えるかもしれません。ご自宅で染める際も、前日の夜までにシャンプーは済ませておくことを、強くお勧めいたします。
最高のコンディションで、最高の仕上がりを
美しいヘアカラーの成功は、私達が行う染める技術だけでなく、その前段階である「準備」、すなわち、お客様の髪と頭皮がどのようなコンディションにあるか、という点から既に始まっています。お客様に最高の仕上がりと、安全で快適な時間をご提供するために、私達が推奨させていただく「当日は髪を洗わずにご来店いただく」という、ほんの小さなご協力。その理由をご理解いただくことこそが、お客様と私達とが固い信頼関係を築き、二人三脚で理想のヘアスタイルを創り上げていくための、何よりも大切な第一歩であると、私達は信じております。