市販毛染めを選ぶ前に。理想の髪色を実現するための、プロからのアドバイス
ドラッグストアの棚に美しく陳列された、数多くの市販ヘアカラー剤。その手軽さと豊富な色のバリエーションは、ご自身のタイミングで、思い立った時にイメージチェンジをしたいと考える多くの方にとって、非常に身近で魅力的な選択肢です。特に「フレッシュライト」に代表されるような、個性豊かで鮮やかなカラーが楽しめる製品は、ご自身のスタイルを表現する上で、心強い味方となってくれることでしょう。
しかし、その手軽さの一方で、「パッケージの色見本とは全く違う色になってしまった」「根元と毛先で色がまばらになってしまった」といった、ちょっぴり苦いご経験をお持ちの方も、決して少なくはないのではないでしょうか。今回は、皆様が日頃から利用される市販ヘアカラー剤と、私達プロフェッショナルがサロンで使用するカラー剤との間にある本質的な違い、そして、ご自身の髪を永く大切にしながら、理想の髪色を実現するための専門的な考え方について、詳しく解説してまいります。
市販ヘアカラー剤が持つ「誰でも染まる」ための設計
まずご理解いただきたいのは、市販のヘアカラー剤は、どのような髪質の方、つまり、髪が硬い方や柔らかい方、あるいは染まりやすい方や染まりにくい方など、あらゆるコンディションの方が使用されることを想定して設計されている、という点です。
そのため、多くの場合、誰の髪でも一定レベル以上にしっかりと染め上げるために、薬剤のパワーが比較的強めに設定されているという特徴がございます。これは、誰でも手軽に染められるという大きなメリットであると同時に、お客様一人ひとりの髪の状態によっては、必要以上のダメージを与えてしまう可能性があるという側面も、併せ持っているのです。
プロが使うサロンカラーとの決定的な違いとは
一方で、私達がサロンでお客様にご提供するヘアカラーは、その考え方の出発点が全く異なります。それは、「不特定多数」のためではなく、目の前にいらっしゃる「ただ一人のお客様」のためだけに、全ての工程がオーダーメイドで組み立てられているという点です。
その最大の違いは、薬剤の「調合」にあります。私達は、まずお客様の現在の髪質、ダメージのレベル、そして元の髪色などをプロの目で正確に診断します。その上で、サロンに常備された数十種類以上もの薬剤の中から、お客様の状態に最も適したものを選び出し、時には数種類の色を1グラムという単位で精密に調合して、世界に一つだけの「あなた専用のカラー剤」を創り上げるのです。
さらに、根元の健康な部分と、ダメージが蓄積された毛先とでは、薬剤の強さや種類、そして塗布するタイミングまでを緻密に計算して塗り分けます。施術の前後、そして途中にも、髪と頭皮を保護し、薬剤による負担を極限まで軽減するための専門的なケアを組み込むことで、ダメージを最小限に抑えながら、最高の仕上がりを実現します。
市販カラー後の髪、サロンでの施術は可能ですか?
もちろん、市販のカラー剤で染められた髪を、サロンで染め直させていただくことは全く問題ございません。どうぞ、お気兼ねなくご相談ください。
ただし、一つだけご理解いただきたい点がございます。市販のカラー剤、特に暗い色で染められた場合などには、その製品独自の特殊な色素が、髪の内部に強く残留していることがございます。そのため、次回のカラーで明るい色をご希望されても、その残留色素が邪魔をしてしまい、一度の施術では思ったような色が出にくい場合がございます。その際には、まず色素を穏やかに取り除くための特別な施術が必要になることもございます。サロンにご来店の際には、カウンセリングの際に、いつ頃、どのような市販の薬剤を使用されたかを正直にお話しいただくことが、次の施術を成功へと導くための、非常に重要な鍵となります。
髪は、あなたの一生に寄り添う大切なパートナーです
手軽な市販のヘアカラーも、計画的に行うサロンでのヘアカラーも、どちらもヘアスタイルを楽しむための、それぞれに良さがある素晴らしい選択肢です。そこで最も大切なのは、それぞれのメリットとデメリットを正しくご理解いただいた上で、ご自身の髪の未来を考え、その時々で最適な方法を選択していくことだと、私達は考えます。
私達は、単に髪を染める場所であるだけでなく、お客様一人ひとりの髪の生涯にわたる健康と美しさを、共に考え、サポートしていく「髪のパートナー」でありたいと願っております。髪に関するどのような些細なお悩みでも、まずは一度、私達にご相談いただけますと幸いです。