なぜ毛染めは根元だけ明るくなる?失敗の原因と美しく修正するプロの技術
ご自身でヘアカラーに挑戦された後、期待を胸に鏡を覗き込んだ瞬間、思わず愕然としてしまった、というご経験はございませんか。毛先の方は思ったほど色が変わっていないのに、なぜか根元や頭頂部だけが不自然に、ギラギラと明るく染まってしまった。このアンバランスな状態を前に、どう対処すれば良いのか途方に暮れてしまうお気持ちは、察するに余りあります。
一見すると不可解にも思えるこの「根元だけ明るい」という失敗。実は、そこには明確な科学的根- 拠と、髪の性質に基づいた理由が存在します。今回は、この失敗がなぜ起こってしまうのか、その原因を解き明かし、私達プロフェッショナルがその複雑な状態をいかにして美しく修正するのか、その技術の一端をご紹介いたします。
「根元だけ明るい」失敗が起こる、二つの主な理由
ご自身の染め方が悪かったのではないかと、自分を責めてしまう方がいらっしゃるかもしれませんが、この失敗はヘアカラーの化学的な特性を理解していないと、誰にでも起こり得る現象です。その主な理由は、大きく分けて二つございます。
一つ目の理由は、頭皮から発せられる「熱」による過剰反応です。ヘアカラー剤が行う化学反応は、温度が高いほど活発に進むという性質があります。血行が盛んな頭皮に近い根元の部分は、常に体温によって温められているため、薬剤の反応が他の部分よりも格段に早く、そして強く進んでしまうのです。結果として、同じ時間放置したにもかかわらず、根元だけがより明るく染まり上がってしまいます。
二つ目の理由は、根元と毛先とで「髪の状態」が全く異なることにあります。生えてきたばかりの根元の髪(新生毛)は、キューティクルも整った健康な状態であるため、薬剤が素直に浸透し、明るく染まりやすい性質を持っています。一方で、過去にカラーを経験している毛先(既染毛)は、ダメージが蓄積している上に、前回までの色素が内部に残留しています。そのため、根元と同じ薬剤を塗布しても、同じようには明るくならないのです。
自己流での修正が、さらなる失敗を招く危険性
このアンバランスな状態を、なんとかご自身で修正しようとお考えになるかもしれませんが、それはさらなる失敗を招きかねない、非常に危険な選択です。
例えば、暗い毛先に合わせて、明るくなった根元を暗く染め直そうとしても、適切な薬剤の色味や強さを選ぶのは至難の業です。結果として、根元だけが不自然に真っ黒になったり、予期せぬ色(緑色など)に変化してしまったりするリスクがございます。逆に、明るい根元に合わせて毛先を明るくしようとすれば、既にダメージを負っている毛先に、さらに強い薬剤を使用することになり、深刻な切れ毛やパサつきの原因となり得ます。
プロフェッショナルは、この状態をどう修正するのか
このように、複数の色が複雑に混在し、ダメージレベルも異なる状態の髪を均一で美しい状態に戻すことこそ、私達プロフェッショナルの腕の見せ所です。
まず、お客様がどのような薬剤を、どのような手順で使用されたのかを丁寧にカウンセリングさせていただき、根元、中間、毛先のそれぞれの色の明るさとダメージレベルを、プロの目で正確に分析します。その上で、一本のカラー剤で全体を染めるのではなく、明るくなりすぎた根元を自然な色味に落ち着かせるための薬剤、そして暗く沈んだ毛先を根元に合わせて優しく明るくするための薬剤、というように、最低でも二種類以上の薬剤を精密に調合し、ミリ単位で塗り分けていきます。髪への負担を最小限に抑えながら、最大の効果を発揮させる。それが、プロの修正カラー技術です。
失敗は、信頼できる理容師と出会うチャンスです
ヘアカラーでの失敗は、決して恥ずかしいことではございません。むしろ、そのご経験は、ご自身の髪の繊細さや、プロの技術の専門性の高さを知るための、貴重な機会であったと捉えることもできます。
どのようなに複雑で、困難に見える状態であっても、私達は決して諦めることはございません。お客様が抱えるお悩みに真摯に向き合い、私達が持つ知識と技術の全てを駆使して、必ずご満足いただける美しいスタイルへと導くことをお約束いたします。その失敗を、あなたにとって最高の「髪のパートナー」と出会うチャンスに変えるお手伝いを、ぜひ私達にさせていただけますと幸いです。