毛染め後、コンディショナーは必要?誠実な理容師が教える、正しいアフターケア
ヘアカラーをされた後、ご自宅でのシャンプーの際に、皆様が何気なくお使いになっている「コンディショナー」。その本来の役割や、カラーリングをした髪にどのような影響を与えているのかについて、深くお考えになったことはございますでしょうか。実は、このコンディショナーに関する正しい知識と、ご自身の髪に合った使い方こそが、サロンで手に入れた美しい髪色を長持ちさせ、髪の健康を守るための、非常に重要な鍵を握っているのです。今回は、ヘアカラーとコンディショナーの密接な関係性について、私たちプロの視点から基本に立ち返って詳しく解説させていただきます。
まずは基本から、「コンディショナー」の本当の役割
まず、多くの方が毎日お使いのコンディショナーが、どのような役割を果たしているのかについてお話しいたします。コンディショナーの主な目的は、髪の「表面」を健やかな状態に整え、保護することにございます。シャンプー後の髪は、表面のキューティクルが少し開いた、無防備な状態にあります。コンディショナーは、その開いたキューティクルを滑らかに整え、髪の指通りを良くすることで、ドライヤーの熱や乾燥、ブラッシング時の摩擦といった、日々の様々な外部刺激から髪を守るための、いわばコーティング剤のような役割を果たしているのです。
「コンディショナー」と「トリートメント」の決定的な違い
ここで、多くの方が混同されがちな「トリートメント」との違いについて、明確にご説明いたします。髪の「表面」を保護するコンディショナーに対し、トリートメントの主な役割は、髪の「内部」にまで浸透し、失われた栄養分や水分を直接補給することにあります。つまり、コンディショナーが髪の外側を守る「鎧」であるとすれば、トリートメントは髪の内側を強くする「栄養剤」のような存在です。ヘアカラーによってダメージを受け、内部の栄養が流出しやすくなっている髪にとっては、この内部補修という工程が、その後の髪の美しさと健康を大きく左右するのです。
ヘアカラー後の髪には、どちらを選ぶべきか
それでは、ヘアカラー後のデリケートな髪には、コンディショナーとトリートメント、どちらを優先的に使うべきなのでしょうか。結論から申しますと、髪の内部を補修する「トリートメント」を日々のケアの中心に据えていただき、さらに髪の表面を保護するために「コンディショナー」も併用していただくのが、最も理想的なアフターケアと言えます。一般的なご使用の順番としては、シャンプーの後にまずトリートメントで髪の内部に栄養をしっかりと与え、その後、コンディショナーで髪の表面をコーティングし、補給した栄養を閉じ込める、という流れが最も効果的です。
ヘアカラーとコンディショナーに関する、よくあるご質問
ここで、お客様からよく頂戴するご質問にお答えいたします。まず、「染める前にコンディショナーを使っても良いですか?」というご質問ですが、答えは「いいえ」です。コンディショナーに含まれる油分などのコーティング成分が髪の表面に残っていると、ヘアカラー剤の浸透を妨げてしまい、深刻な染めムラの原因となる可能性がございます。カラーリングをされる当日の朝は、シャンプーのみで済ませていただくか、可能であれば何もせずにご来店いただくのが最善です。
また、「カラーケア用のコンディショナーは何が違うのですか?」というご質問も多くいただきます。これらは、カラーの色素が髪から流れ出るのを防ぐ成分や、褪色の大きな原因となる紫外線から髪を守る成分が配合されるなど、カラーリングされた髪のために特別に処方されています。美しい髪色を一日でも長くお楽しみいただきたい方には、ぜひお使いいただきたいアイテムです。
正しいケアの知識が、美しい髪色を育む
サロンで手に入れた美しいヘアカラーは、施術の瞬間だけで完成するものではございません。お客様ご自身による、コンディショナーやトリートメントを用いた日々の正しいアフターケアがあって初めて、その輝きを真に長く保つことができるのです。どの製品がご自身の髪に合っているのか、どのような順番で、どのくらいの時間をかけてケアをすれば良いのか。その答えは、お客様一人ひとりの髪質やダメージの度合いによって全く異なります。私たち誠実な理容師は、お客様の髪の状態をプロの目で見極め、サロンでの最高の施術をご提供するのはもちろんのこと、ご自宅での最適なホームケアの方法まで、責任を持ってアドバイスさせていただくことこそが、大切な使命であると考えております。