髪は「すく」べきか、「すかない」べきか?プロが教える、究極の選択の答え
バーバーサロン(理容室)でのヘアカットにおいて、当たり前のように行われている「髪をすく」という施術。しかし、ある人はそのおかげで軽やかで扱いやすいスタイルを手に入れ、またある人は、すかれすぎたことでかえってまとまりを失ってしまった、という苦い経験を持つかもしれません。そんな中で、「そもそも、自分の髪は本当にすく必要があるのだろうか?」「むしろ、すかない方が美しいのではないか?」という、根源的な疑問が生まれるのは、ご自身の髪と真剣に向き合っているからこその、至極当然のことと言えるでしょう。この「すく」か「すかない」か、という究極の選択。実は、そこに絶対的な正解というものは存在しません。あるのは、あなたの理想を叶えるための、私たちプロによる「最適な判断」だけなのです。
なぜ「髪をすく」という選択肢があるのか
まず、私たちがなぜ「髪をすく」という技術を用いるのか、その基本的な目的についてお話しします。髪の量が多くてスタイルが重たく見えてしまう方のボリュームを調整したり、硬い髪質の方に柔らかく軽やかな動きを与えたり、あるいはスタイリング剤をつけた時に立体的な束感を表現しやすくしたりと、「髪をすく」技術は、ヘアデザインに「軽快さ」や「空気感」といった、現代的な魅力を加える上で、非常に有効で不可欠な手段です。
あえて「髪をすかない」という、プロの選択
しかし、私たちプロの理容師は、時としてお客様の魅力を最大限に引き出すために、あえて「髪をすかない」という、勇気ある選択をすることがございます。
① 髪本来の「ツヤ」を最大限に活かすため
髪をすかずに、カットラインを美しく揃えて仕上げることで、髪の表面が整い、光を均一に反射するようになります。これにより、髪が本来持っている、健康的で自然な「ツヤ」を、最大限に引き出すことができます。特に、髪が細い方や、ダメージが気になる方にとっては、この選択が髪を最も美しく見せるための最善手となる場合がございます。
② スタイルに「重さ」と「まとまり」を与えるため
近年トレンドとなっている、あえて重めのシルエットを残したヘアスタイルや、ご自身のくせ毛を活かし、その重みでしなやかにまとめたい場合など、「すかない」ことでしか表現できない、落ち着きのあるモードな雰囲気を創り出すことができます。
③ 髪の密度を保ち、豊かに見せるため
髪のボリュームが気になり始めている方が、むやみに髪をすいてしまうと、かえって全体の密度が低く見え、地肌が透けてしまうリスクがございます。「すかない」という選択は、髪の密度を高く保ち、若々しく力強い印象を維持するための、非常に重要な戦略的判断なのです。
「すく」か「すかない」か。プロは何を見て判断しているのか
では、私たちプロは、何を基準にその究極の選択を行っているのでしょうか。私たちは、お客様が椅子に座られた瞬間から、少なくとも三つの要素を総合的に診断し、あなたにとっての最適解を導き出しています。一つ目は、お客様一人ひとりが持つ「髪質」。二つ目は、頭の形を司る「骨格」。そして三つ目が、お客様が心の中に描く「なりたいイメージ」です。この三つの複雑な要素を掛け合わせることによって、すくべきか、すかないべきか、あるいは「この部分はすいて、この部分はあえて重く残す」といった、完全オーダーメイドの答えが生まれるのです。
あなたの想いを伝える、オーダーのヒント
もし、ご自身の意思が固まっているのであれば、「今回は、すかずに重さを残したスタイルでお願いします」と、どうぞご遠慮なくお伝えください。その想いを、私たちは最大限に尊重いたします。しかし、最も良いのは、お客様ご自身の判断で決めつけてしまうのではなく、「自分では、すくべきか、すかないべきかよく分かりません。髪が多くて広がるのが悩みですが、薄く見えてしまうのも嫌で…」といったように、ご自身の悩みと葛藤を、そのまま私たちプロに相談していただくことです。
「髪をすく」か「すかない」かは、どちらかが正しくて、どちらかが間違っているという単純な問題ではございません。それは、あなたの魅力を最大限に引き出すための、無数に存在する選択肢の一つに過ぎないのです。その究極の選択を、お客様に丸投げするのではなく、プロとして責任を持って判断し、その理由を丁寧にご説明すること。それこそが、誠実な理容師の仕事です。あなたの髪に秘められた、まだ見ぬ最善の答えを、ぜひ私たちと一緒になって見つけ出しましょう。