髪をすくと「うねる」のはなぜ?くせ毛を味方につける、プロの毛量調整術
髪の量を減らして、もっと軽やかで、もっと扱いやすいヘアスタイルにしたい。そう願って散髪屋(理容室)で髪をすいてもらったにもかかわらず、かえって髪がうねり、以前よりもまとまりが悪くなってしまった…。もし、あなたがそのようなご経験をお持ちだとしたら、そのお気持ちは痛いほどよく分かります。その「うねり」は、お客様が持つ髪質のせいだけではなく、実は「髪のすき方」に大きな原因が隠されているのです。今回は、髪をすくとなぜうねりが出てしまうのか、そのメカニズムと、あなたのくせ毛を美しい魅力へと変えるための、正しい技術についてお話しさせていただきます。
髪が「うねる」原因は、くせの”節”の露呈にあり
まず、ご理解いただきたいのは、くせ毛と呼ばれる髪の多くは、一本の髪の毛の中で太い部分と細い部分が混在し、それが“節”のようになって「うねり」を生み出しているという点です。髪が密集して重なり合っている状態では、周りの髪の重みによって、この“節”が生み出すうねりが、ある程度抑え込まれています。しかし、ヘアスタイル全体の構造を考慮せず、無計画に髪をすいてしまうと、その重しの役割が失われ、これまで隠れていた「うねりの節」が好き勝手に動き出し、表面化してしまうのです。これこそが、髪をすいた後に、うねりがかえってひどくなってしまう最大の原因にほかなりません。
くせ毛を活かす、プロの「見極める」技術
では、私たちプロの理容師は、お客様の髪のうねりをどのようにコントロールしているのでしょうか。それは、お客様の髪を深く観察し、「見極める」ことから始まります。
うねりの周期を見極める
私たちプロは、まずお客様の髪のうねりが、どのくらいの長さで一つのカーブを描いているのか、その「周期」を丁寧に見極めます。そして、うねりが最も強く現れる“節”の部分を正確に把握し、その部分のカットを慎重に避けることで、不要なうねりが表面化することを防ぎます。
内側に、必要なだけ
髪の表面は、スタイル全体のまとまりとツヤを司る、非常に大切な部分です。私たちはこの表面の髪を、くせを抑えるための自然な「蓋」として活かすため、極力そのまま残します。そして、ボリュームの直接的な原因となっている髪の「内側」で、かつ、うねりの影響が少ない部分だけを狙い、最小限の量だけを丁寧に取り除いていくのです。
「すく」のではなく「スライドさせる」技術
時には、ギザギザの刃がついたすきバサミを使わず、通常のハサミの刃を滑らせるようにして毛量を調整する「スライドカット」といった高度な技法を用いることもございます。これにより、髪の断面を滑らかに整え、うねりをより自然な毛流れに馴染ませていくのです。
くせ毛の方がオーダーする際の、大切な心構え
もし、ご自身のくせ毛にお悩みでしたら、オーダーの際にぜひそのお気持ちを正直にお聞かせください。「くせ毛で、すくと広がりやすいのが悩みです」と、最初にその一言を伝えていただくだけで、私たちの仕事の精度は格段に上がります。「量を減らしたい」というご要望と共に、「このクセを活かして、パーマのように見せたい」あるいは「とにかく毎朝のセットが楽になるように、まとまりやすくしたい」といった、ご自身のゴールイメージをぜひお話しください。
あなたの「くせ」は、唯一無二の個性です
私たちは、お客様が持つ「くせ」を、決してネガティブなものだとは考えておりません。それは、他の誰にも真似のできない、あなただけの素晴らしい個性です。私たち誠実な理容師の仕事は、その個性を無理やり抑えつけることではありません。その特性を深く理解し、時には活かし、時には優しくいなしながら、あなたにとって最も心地よく、最も輝けるスタイルを、お客様と一緒になって見つけ出していくことです。
「髪をすくと、うねる」というお悩みは、あなたの髪質のせいではなく、その特性を理解しないまま行われた施術の結果であることがほとんどです。あなたのくせ毛が持つ本当の魅力を引き出す、計算され尽くしたプロの毛量調整を、ぜひ一度ご体験ください。これまで悩みの種であったそのくせが、きっとご自身の愛おしい一部になるはずです。