「全体的に短く」で終わらない。散髪屋で創る、計算されたショートスタイル
気分を心機一転、すっきりとさせたい時。あるいは、毎朝のスタイリングにかける時間を少しでも短縮したい時。理容室の椅子に座り、思わず口から出てくる「全体的に短くしてください」というオーダー。それは、多くの男性が一度は使ったことのある、潔く、そして非常にシンプルなご要望です。しかし、その飾らない一言の裏側には、「ただ短ければ良いというわけではない」「自分に似合う形で、格好良く短くしてほしい」という、お客様の隠れた願いが込められていることを、私たちは知っています。
プロが考える「全体的に短く」の本当の意味
お客様から「全体的に短く」というオーダーをいただいた時、私たちプロの理容師の頭の中では、単に全ての髪を同じ長さに切り揃える、という単純な作業は想定されておりません。なぜなら、本当に全ての髪を均一の長さにカットしてしまうと、お客様一人ひとりが持つ頭の形、つまり骨格がそのまま 드러わになり、かえってバランスの悪いヘアスタイルになってしまうことが多いからです。私たちが考える「全体的に短く」とは、短いながらも計算された「長短」をデザインすることです。例えば、トップには数ミリ単位で長さを残して高さを出し、ハチが張っているサイドはより短くカットして膨らみを抑える。この目には見えないほどの微細な長さのコントロールによって、お客様の頭の形を最も美しく見せるシルエットを創り出しているのです。
「全体的に短く」から生まれる、洗練されたスタイル例
「全体的に短く」というご要望から、実に多彩で洗練されたヘアスタイルを生み出すことが可能です。例えば、短い中にもトップの毛先の質感や前髪のあしらいで個性を表現する「デザイン性のあるベリーショート」。あるいは、ただの丸坊主ではなく、頭の形が綺麗に見えるよう絶妙なグラデーションをつけた「品格のある大人坊主(ボウズスタイル)」。そして、サイドとバックを地肌が透けるほどに短く刈り上げ、トップにかけて滑らかに繋げる「フェードスタイル」は、「全体的に短く」というご要望を、最も現代的かつスタイリッシュに表現した、究極のショートスタイルの一つと言えるでしょう。
あなたの想いを正確に伝える、オーダーの一工夫
私たちプロは、お客様の曖昧な言葉からでも理想を汲み取る努力を惜しみませんが、お客様からもう一言添えていただくことで、仕上がりの満足度はさらに高まります。例えば、「一番短い部分は、バリカンで〇ミリくらいにしたい」といった基準となる長さや、「爽やかな印象になりたい」「男らしい雰囲気で」といった、なりたいイメージを言葉で伝えていただくことは非常に有効です。もちろん、理想とするヘアスタイルの写真をお見せいただくのが、最も確実な方法であることは言うまでもありません。
「全体的に短く」というオーダーは、お客様から私たちプロへの、信頼の言葉であり、ある種の挑戦状でもあると、私たちは考えております。そのシンプルな言葉に込められたお客様の想いを、誠実なカウンセリングと確かな技術で、ご期待を超える形にしてみせること。それこそが、理容師としての私たちの最大の喜びです。どうぞ、曖昧な言葉でも構いません。あなたの「なりたい姿」を、ぜひ私たちにお聞かせください。