そのワックス、本当に正解?バーバーショップで識る、本物のスタイリング剤
「普段、整髪料はワックスを使っている」多くの男性にとって、それはもはや常識かもしれません。しかし、こだわりのバーバーショップで創り上げたスタイルに、いつものワックスをつけた時、なぜかお店での仕上がりと違う、と感じた経験はないでしょうか。
もしかしたら、その違和感の正体は、あなたのスタイリング技術ではなく、使っている「整髪料」そのものにあるのかもしれません。この記事では、ワックスが万能ではないという事実と、バーバーショップの理容師がスタイルに応じて整髪料を使い分ける、プロフェッショナルの世界について解説します。
バーバーの基本は「ワックス」にあらず
驚かれるかもしれませんが、フェードカットやパートスタイルといった、いわゆる王道のバーバースタイルにおいて、理容師が主役として使うのはワックスではありません。彼らが最も信頼を置くのは、「ポマード」や「グリース」です。
なぜなら、ワックスが髪に「動き」や「束感」を与え、無造作な質感を創るのを得意とするのに対し、ポマードやグリースは、髪全体を一つの面として捉え、「まとまり」と「艶」を与えることを得意とするからです。ビシッと整えられた紳士的なスタイルを創るには、髪を散らすのではなく、美しく収める力が必要不可欠。その役割を最も的確に果たしてくれるのが、ポマードやグリースなのです。
プロが「ワックス」を選ぶ、特別なスタイル
もちろん、バーバーショップがワックスを全く使わないわけではありません。お客様が求めるスタイルが、まとまりよりも「軽さ」や「質感」を重視するものであれば、理容師は迷わずワックスを選択します。
例えば、柔らかな丸みが特徴の「マッシュスタイル」や、無造作な動きが魅力の「クロップスタイル」、そして自然な毛流れを活かした「センターパート」などです。これらの現代的なスタイルには、マットな質感や空気感を表現できるワックスが最適です。プロは、創り上げたヘアデザインの魅力を最大限に引き出すために、最適な一手を見極めているのです。
あなたの武器はどれ?整髪料の正しい選び方
では、私たちはどのように整髪料を選べば良いのでしょうか。それは、あなたの「なりたい姿」から逆算するのが最も分かりやすい方法です。
七三分けやスリックバックのような、艶やかでクラシックなスタイルを目指すなら「ポマード」。ウェットな質感とセット力を両立させたい、あるいはパーマの動きを活かしたいなら「グリース」。そして、マッシュやショートウルフのように、軽さやナチュラルな束感を表現したいなら「ワックス」。それぞれに得意な役割があり、優劣はありません。大切なのは、目的と手段を一致させることです。
最高の答えは、誠実な理容師との対話の中に
自分の髪質や、手に入れたヘアスタイルに本当に合った整髪料は何か。その究極の答えは、専門家である理容師との対話の中にあります。
誠実な理容師は、ただ髪を切るだけではありません。お客様の普段のスタイリング方法や、髪の悩みに耳を傾け、数ある選択肢の中から、その人にとって最も扱いやすく、最も理想の質感に仕上がる一品を選び出してくれます。さらに、その効果を最大限に引き出すための、正しい使い方までを丁寧にレクチャーしてくれるはずです。
まとめ
あなたが普段何気なく手に取っているワックスは、数ある整髪料の中の一つの選択肢に過ぎません。バーバーショップの扉を開けることは、これまで知らなかった、よりあなたの魅力を引き出す新しい選択肢と出会うきっかけにもなります。
最高のヘアスタイルは、最高のカット技術と、それを完璧に再現するための最高の整髪料、そしてその使い方を知って初めて完成します。ぜひ一度、信頼できる理容師に、あなたのためだけの「正解」を相談してみてはいかがでしょうか。