「理容店」と「バーバー」。その違いと、変わらない大切なこと
近頃、街を歩いていると、「BARBER」というクラシックで洒落た看板を目にする機会が増えたように感じませんか。それは、私たちが昔から慣れ親しんできた「理容室」とは、どこか違う、洗練された特別な雰囲気をまとっているように見えるかもしれません。「バーバー」と「理容室」は、一体何が違うのだろうか。そして、私たちはどちらを選べば良いのだろうか。その素朴な疑問から、現代のメンズヘアカルチャーの興味深い流れと、時代を超えて決して変わることのない、私たち理容師の仕事の本質について、お話しさせていただきたいと思います。
言葉は違えど、法律上は同じ「理容師の仕事」
まず、皆様の疑問に明確にお答えしますと、「バーバー(Barber)」とは、英語で理容師や理容室を意味する言葉です。日本の法律上では、私たちが普段使う「理容室」や「理容店」と全く同じ、「理容所」という一つの施設に分類されます。つまり、どちらの看板を掲げていたとしても、そこで働くのは、厳しい訓練を経て国家資格を取得した「理容師」であり、お客様の髪をカットし、お顔をシェービングするといった、専門的なサービスが受けられることに、何の違いもないのです。
なぜ今、再び「バーバー」が注目されるのか
ではなぜ、同じ意味であるはずの「バーバー」という言葉が、今、これほどまでに新鮮な響きを持って、私たちの前に現れたのでしょうか。その背景には、近年の世界的なメンズファッションにおける、「クラシック回帰」という大きな潮流があります。古き良き時代の紳士たちが見せた、隙のない、品格あるスタイルを現代的に再解釈しようという動きの中で、かつての伝統的な理容技術が、再び脚光を浴びることになったのです。
緻密なグラデーションを描くフェードカットや、艶のあるポマードで仕上げる七三分けといった、伝統的な技術で創り上げるスタイルは「バーバースタイル」と呼ばれ、ファッションやカルチャーに敏感な若い世代を中心に、全く新しい、格好良いものとして受け入れられました。つまり、「バーバー」という言葉は、この新しいカルチャーの象徴として、伝統への敬意と、最先端の感性を併せ持つ、特別なキーワードとして使われているのです。
最新の「バーバースタイル」を支える、揺るぎない伝統技術
一見すると、非常に新しく、現代的に見える「バーバースタイル」。しかし、そのスタイルの根幹を支えているのは、驚くことに、日本の理容師たちが昔から、お客様一人ひとりと向き合う中で、ただ黙々と磨き上げてきた、ミリ単位の精度を誇る「刈り上げ」の技術に他なりません。お客様の頭の形に合わせて、バリカンとコームを巧みに操り、どこまでも滑らかなグラデーションを創り出す繊細な手仕事。清潔感の要となる、カミソリを使ったシャープなラインアップ(産毛剃り)。そのすべてが、流行が生まれるずっと以前から、私たち理容室が大切に受け継いできた、伝統的な技術の応用なのです。最新のスタイルを完璧に再現できるのは、その土台となる、揺るぎない基礎があるからこそなのです。
看板の先に、誠実な仕事があるか
「理容室」であれ、「バーバー」であれ、その呼び名は、お店が持つ個性やコンセプトを表現するための一つの看板に過ぎません。その言葉の違いに、過度にこだわる必要はないのかもしれません。本当に大切なのは、その看板の向こう側で、あなたという一人の人間と真摯に向き合い、持てる技術のすべてを尽くして、最高のヘアスタイルを創り上げようと奮闘する、誠実な理容師がそこにいるかどうか、ということです。
私たちは、古き良き理容の伝統に深い敬意を払いながらも、常に現代の空気を取り入れ、お客様に心からご満足いただけるスタイルをご提供したいと願っています。呼び名が何であれ、私たちの仕事の本質は、お客様一人ひとりへの、どこまでも誠実な姿勢にあります。ぜひ一度、その技術と、私たちの想いに、直接触れに来てください。