理容店での注文の仕方|失敗しない、理想の髪型を伝える3つの要素
理容店の椅子に座り、ご自身の理想の髪型を伝える「注文」の時間は、少し緊張する瞬間かもしれません。頭の中には完成形のイメージがあるのに、それを的確に言葉にするのは難しいものです。しかし、ご安心ください。専門的な用語を並べる必要は一切ありません。ご自身のなりたいスタイルを、いくつかのシンプルな要素に分解して伝えるだけで、理容師とのイメージ共有は驚くほどスムーズになります。この記事では、理容店での注文を失敗させないための、三つの重要な要素について解説してまいります。
要素1:全体の「長さ」と、残したい部分
注文の基本であり、最も重要なのが、仕上がりの「長さ」に関するご要望です。まずは、どれくらい切りたいのか、あるいはどれくらい残したいのかという、大まかな基準を伝えることから始めましょう。
その際には、具体的なセンチメートルで伝えるよりも、「耳が完全に出るくらい」「眉毛にかからない長さで」「襟足は刈り上げてすっきりと」といったように、顔のパーツや身体の部分を基準にお話しいただくと、イメージのズレが起こりにくくなります。また、「トップの長さは今のまま、サイドだけ短くしてください」のように、変えたい部分と変えたくない部分を明確に伝えることも、非常に有効な注文の仕方です。
要素2:目指す「形(シルエット)」と、全体の印象
長さが決まったら、次に大切なのがヘアスタイル全体の「形」、すなわちシルエットです。同じ長さでも、シルエットが変われば、与える印象は大きく異なります。写真などを見せながら、ご自身の目指す形に近いイメージを共有するのが最も確実です。
もし写真がない場合でも、「サイドの膨らみを抑えて、全体的にタイトなシルエットに」「トップにボリュームを持たせて、菱形のシルエットに」といったように、どのような形を目指したいかを伝えてみましょう。誠実な理容師は、お客様のご要望を元に、骨格や髪質を考慮した上で、最適なシルエットをデザインしていきます。
要素3:こだわりたい「細部(ディテール)」と、質感
全体の長さと形が決まったら、最後にこだわりたい「細部」について伝えましょう。神は細部に宿る、という言葉があるように、このディテールへのこだわりが、あなただけの個性的なスタイルを創り上げます。
例えば、「もみあげは自然な形で残したい」「刈り上げは、地肌が透けるくらい短くしたい」「髪の量は、あまり軽くしすぎないで重めに仕上げたい」といった具体的なご要望は、仕上がりの満足度を大きく左右します。また、スタイリング後の「艶のある質感にしたい」「マットで無造作な質感にしたい」といったご希望も、カットの仕方やスタイリング剤の選定に影響しますので、ぜひお伝えください。
最高の注文とは、対話を楽しむこと
ここまで三つの要素をご紹介しましたが、これらは決して、お客様が一方的に伝えなければならない「指示書」ではございません。むしろ、これらは理容師との「対話」を始めるための、きっかけとなるテーマです。お客様からいただいた要素を元に、誠実な理容師は「それでしたら、こちらのスタイルのほうが、よりお客様の髪質に合いますよ」といった、プロならではの提案をさせていただきます。このキャッチボールを通じて、お客様の理想はさらに洗練され、最高のヘアスタイルへと昇華していくのです。
「注文」を通じて、理容師をパートナーに
理容店での上手な注文の仕方とは、突き詰めると、お客様と理容師が協力して一つの作品を創り上げる、共同作業のプロセスそのものです。今回ご紹介した三つの要素をヒントに、ぜひ理容師との対話を楽しんでみてください。安心してご自身の理想を相談でき、共にスタイルを創り上げてくれる理容師と出会えたとき、その理容師はあなたにとって、かけがえのないパートナーとなるはずです。