理容室で教わる、ヘアワックスの選び方とプロのスタイリング術
理容室で髪を切り終えた直後、鏡に映る完璧にセットされたご自身の姿に満足された経験は、多くの方にあるかと存じます。しかし、翌朝ご自身でスタイリングを試みると、なぜか同じようには決まらない。その原因は、ご自身の髪質やヘアスタイルに合っていないワックスを選んでいたり、その使い方を誤っていたりするのかもしれません。この記事では、理容室のプロが実践する、ヘアワックスの選び方と使い方の基本について解説いたします。
なぜ理容室のスタイリングは決まるのか
プロのスタイリングが美しく決まる理由は、単にワックスの性能が良いからだけではございません。その背景には、計算された「ベース作り」があります。まず、スタイリングしやすいように緻密に計算されたカットが施されていること。そして、ドライヤーを使って髪の根元を立ち上げ、全体のフォルムと毛流れを整える「ドライ」の工程が、実は仕上がりの8割を決定づけています。ワックスは、この完璧な土台の上に、質感や束感、そして持続力を与えるための「仕上げ」の役割を担っているのです。
無数にあるワックス、自分に合うものの見つけ方
市販されているヘアワックスには、実に多くの種類が存在します。どれを選べば良いか分からないという方も多いでしょう。ワックスは、主に「セット力」と「ツヤ感」の二つの軸で分類できます。例えば、短い髪を立たせるようなスタイルにはセット力の強いハードタイプを。パーマヘアのような柔らかな動きを出したい場合は、セット力が弱めのクリームタイプを。そして、クラシカルな濡れ感のあるスタイルには、ツヤの出るグリースやポマードを選ぶのが基本です。ご自身の髪質となりたいヘアスタイルを理容師に伝えることで、最適な一品を推薦してもらうのが最も確実な方法です。
プロが実践する、ワックスの基本的な使い方
ワックスを効果的に使うには、いくつかの簡単なコツがあります。まず、一度に取る量はごく少量(小豆一粒程度)から始めます。それを手のひら、指の間まで、透明になるまでしっかりと伸ばし広げることが、ムラなく仕上げるための最も重要なポイントです。
そして、髪に付ける際は、ボリュームがなくなってしまいがちな前髪からではなく、後頭部や髪の内側から、根元を揉みこむように付けていきます。全体にワックスが馴染んだら、最後に指先で毛束をつまんだり、毛流れを整えたりして、全体のシルエットを調整します。この手順を守るだけで、仕上がりは格段に向上するはずです。
最良のアドバイザーは、あなたの髪を知る理容師
ヘアワックスに関する最も的確なアドバイスをくれるのは、雑誌やインターネットの情報ではなく、お客様一人ひとりの髪質、生え癖、そして施したカットのデザインまで、すべてを熟知している担当の理容師に他なりません。施術の最後にスタイリングをしてもらう際に、「今日はどんなワックスを使いましたか?」「家で自分でもできますか?」と、ぜひお気軽にご質問ください。誠実な理容師は、お客様がサロンを出た後も、毎日格好良く過ごしていただくためのサポートを惜しみません。
理容室は、髪を切るだけの場所ではなく、ご自身の魅力を高めるための「学びの場」でもあります。プロの技術と知識を、ぜひあなたの毎日のスタイリングにお役立てください。