ヘアセットの隠れた主役「ピニング」とは?プロが教える基本技術と応用
プロのヘアセットを見ていると、何気なく、しかし的確にヘアピンが使われていることに気づきます。この、ピンを使ってヘアスタイルを構築する技術こそが「ピニング」です。一見地味な作業に見えますが、実はスタイルの完成度と持続性を左右する非常に重要なテクニックなのです。
この記事では、メンズヘアセットにおけるピニングの基本から、その技術を活かすための考え方までを詳しく解説します。
ヘアセットにおける「ピニング」の役割
ピニングは、単に髪を邪魔にならないように留めておくだけの作業ではありません。ヘアデザインの土台を作り、細部をコントロールするための、計算された精密な技術です。
なぜただの「ピン留め」ではないのか?
プロが行うピニングには、必ず明確な目的があります。それは、スタイリング剤だけでは作れない立体感や、持続性の高いシルエットを、物理的に作り出すことにあります。
ピニングの主な目的
- フォルム(形)の固定
ドライヤーやヘアアイロンで作った根元の立ち上がりや、毛束の動きを、髪が冷めて形が定着するまで一時的に固定します。これにより、スタイルの基礎が強固になります。 - ボリュームのコントロール
膨らみやすいサイドの髪を内側で留めてタイトに抑えたり、逆にUピンを使ってパーマのふんわりとしたボリュームをキープしたりと、シルエットを自在に操ります。 - デザインの補助
ツイストや編み込みといった複雑なデザインを物理的に支え、結婚式やイベントなど、長時間スタイルを維持させたい場面で絶大な効果を発揮します。
ピニングの基本技術とピンの種類
メンズヘアセットで主に使われるピンと、その基本的な使い方を覚えましょう。
主に使用するピン
- アメリカピン(アメピン)
固定力が高く、あらゆる場面で使われる基本のピン。短い髪もしっかりと留めることができます。髪色に合わせたマットな色のものを選ぶと目立ちにくいです。 - Uピン(オニピン)
固定力はアメピンに劣りますが、毛束を優しく支え、ふんわりとした質感を損なわずに形をキープするのに適しています。パーマヘアのボリューム調整などに使われます。
基本的なピニングテクニック
- 隠しピン
ピニングの最も基本的な技術です。留めたい部分の表面の髪をそっと持ち上げ、その内側にある髪をすくってピンを挿します。そして、持ち上げた表面の髪を上から被せることで、ピンを完全に見えなくします。 - 交差留め(バッテン留め)
2本のアメピンを交差させて留めることで、1本で留めるよりも格段に固定力を高める技術です。絶対に崩したくない部分に使います。 - 根元の立ち上げ固定
ドライヤーで立ち上げた前髪の根元などを、髪が完全に冷めるまでの間、アメピンで仮留めしておくテクニックです。これにより、スタイリング剤に頼らずとも、強力な立ち上がりをキープできます。
ピニング技術を不要にする「プロのカット」
ピニングは非常に有効な技術ですが、「そもそも、なぜピニングが必要になるのか?」を考えてみることも重要です。その答えは、多くの場合、ベースとなるカットデザインにあります。
なぜピニングが必要になるのかを考える
ピンを使わなければならないのは、「髪が思うように動いてくれない、理想の位置に留まってくれない」からです。その根本原因は、髪質だけでなく、あなたの髪型そのものが、あなたの骨格や生え癖に合っていない可能性が高いのです。
「カット」で毛流れと収まりをデザインする
- 再現性の高いカット
プロの理容師は、お客様が自宅でスタイリングする際に、極力ピンなどを使わなくても済むように、毛流れや重さのバランスを緻密に計算してカットします。髪が自然と流れたい方向へ導き、収まるべき場所へ収まるようにデザインされているのです。 - 骨格補正
ハチが張ってサイドが膨らんでしまう悩みも、的確な毛量調整とカットラインによって、ピニングで無理やり抑えつける必要のない美しいシルエットに仕上げます。
「パーマ」という恒久的な解決策
- ダウンパーマ
サイドの浮き癖を、毎朝ピンで抑える代わりに、パーマの力で恒久的に抑えることができます。日々のスタイリングの手間から、完全に解放されます。 - 毛流れを作るパーマ
頑固な直毛で流れにくい前髪も、ごく緩いパーマをかけるだけで、ピニングなしで自然に流れるようになります。
まとめ
ピニングは、知っておくとヘアセットのレベルを格段に上げてくれるプロの技術です。ぜひ基本をマスターして、日々のスタイリングに活かしてみてください。
しかし、最高のヘアスタイルとは、そもそもピニングのような補助技術を必要としないほど、カットそのものが完璧である状態を指します。もしあなたが、日々のスタイリングの手間を根本から解消し、本当に扱いやすい髪を手に入れたいと願うなら、ぜひ一度メンズヘアのプロフェッショナルである理容師にご相談ください。あなたの髪の悩みを、カットという最も本質的な技術で解決します。