刈り上げの仕上がりはブロッキングで決まる。設計図に隠されたプロの技術
理想の刈り上げスタイルを手に入れるため、カットの技術そのものに注目が集まりがちです。
しかし、その美しい仕上がりを支えているのは、カットを始める前に行われる、一見地味な「ブロッキング」という工程に他なりません。
理容師が髪を正確に分け、クリップで留めていくこの作業こそ、ヘアスタイル全体の完成度を左右する、いわば建築における「設計図」を描く最も重要なプロセスなのです。
今回は、刈り上げにおけるブロッキングの役割と、プロの技術がなぜ必要なのか、その奥深い世界を解説します。
刈り上げにおけるブロッキングとは?その目的
ブロッキングとは、カットを始める前に、頭をいくつかのセクションに分けて髪を留めておく作業のことです。
これは単なる準備運動ではなく、美しいスタイルを構築するための、明確な目的を持った戦略的な工程です。
- 目的1:正確なカットのため
刈り上げる部分と残す部分を明確に分けることで、誤って必要な部分まで刈ってしまうといったミスを防ぎます。
特に、ミリ単位の精度が求められる刈り上げにおいて、この正確性は不可欠です。 - 目的2:美しいラインを創るため
ツーブロックスタイルにおけるトップとサイドの境界線や、襟足の最終的なラインなど、ヘアスタイルの輪郭となるガイドラインの役割を果たします。
この最初のラインが、仕上がりの美しさを決定づけます。 - 目的3:バランスと再現性の向上
頭全体をいくつかのブロックに分けて考えることで、左右対称でバランスの取れたスタイルを構築しやすくなります。
感覚だけに頼らず、理論的にスタイルを組み立てることで、いつでも同じクオリティを再現できるのです。
プロはここを見ている。ブロッキングの3つのポイント
プロの理容師は、ただ漠然と髪を分けているわけではありません。
お客様一人ひとりの特徴を瞬時に見抜き、完成形をイメージしながら、緻密な計算のもとにブロッキングを行っています。
1. 骨格
人の頭の形は千差万別です。
ハチが張っている、後頭部が平ら(絶壁)であるなど、その人の持つ骨格の特徴を正確に把握し、その骨格が最も美しく見えるラインでブロッキングを行います。
例えば、ハチが張っている方なら、その部分を少し内側に入れたラインで分けることで、頭の形をシャープに見せることができます。
骨格補正は、このブロッキングの段階から既に始まっているのです。
2. 生えグセ
髪が生えている方向や、つむじの位置、毛流れもブロッキングの重要な判断材料です。
これを無視してブロッキングをしてしまうと、カット後に髪が不自然に浮いてしまったり、スタイリングがしにくくなったりする原因になります。
髪が自然に収まる位置を見極め、それに合わせてラインを引くのがプロの技術です。
3. 完成形のイメージ
最も重要なのが、最終的なヘアスタイルを完璧にイメージする力です。
プロは、お客様の要望と素材(骨格・髪質)を元に、頭の中に完成図を描き、そこから逆算して最適なブロッキングラインを導き出します。
これは、長年の経験と、数多くのスタイルを手がけてきた美的センスがなければ不可能な作業です。
なぜセルフカットのブロッキングは難しいのか
「ただ髪を分けるだけなら自分でもできそう」と思うかもしれませんが、プロと同じクオリティのブロッキングを自分で行うのは至難の業です。
- 見えない部分の正確性
合わせ鏡を使っても、後頭部や耳の後ろを、頭の丸みに沿って左右対称に、かつ正確なラインで分けることは非常に困難です。 - 客観的な判断の欠如
自分の頭の形や生えグセを、客観的に正確に把握し、それを補正するためのラインを導き出すことは、専門知識がなければほぼ不可能です。 - 道具と技術の限界
髪を濡らした状態で、コームを使ってシャープなラインを取り、それをずれないようにクリップでしっかりと留める。
この一連の動作自体が、訓練を要する技術なのです。
まとめ
刈り上げスタイルの成功は、カット技術そのものだけでなく、その土台となる「ブロッキング」という設計図作りで、そのクオリティの大部分が決まっています。
そして、その美しい設計図は、お客様一人ひとりの骨格や髪質を深く理解し、完成形を正確にイメージできる、プロの理容師にしか描くことのできない芸術品と言えるでしょう。
あなたのための、完璧な設計図から創り上げるオーダーメイドの刈り上げスタイル。
ぜひ一度、私たちのこだわり抜いた技術を体験しに来てください。